「淋しい」と「寂しい」の意味や違いとは?|知りたいこと4つを解説

「さみしい(さびしい)」という言葉には、「寂しい」と「淋しい」の2種類の漢字をあてることができます。

ここでは、寂しいと淋しいの意味の違いや使い分け方、英語にしたときの表現などについてご紹介します。

漢字が持つ本来の意味やニュアンスについて、理解を深めましょう。

「寂しい」と「淋しい」とは?

「寂しい」と「淋しい」とは?
「寂しい」と「淋しい」のもっともわかりやすい違いは、常用漢字か表外漢字か、ということです。

常用漢字とは、一般的に使われる漢字のことで、内閣が決めています。

表外漢字は、常用漢字以外の漢字のことを言います。

常用漢字として一般的に使うことを推奨されているのが「寂しい」という漢字です。

「淋しい」という漢字は、一般的にあまり使わないようにしましょう(「寂」を使いましょう)ということに決まっているのです。

「寂しい」と「淋しい」の違いについて知りたいこと4つ

「寂しい」と「淋しい」が常用漢字か表外漢字か、という違いがあることが分かりました。

では、「寂しい」と「淋しい」に他の違いはないのでしょうか?

わざわざ別の漢字をあてているのに、まったく違いがないはずありませんよね。

そこで、「寂しい」と「淋しい」の違いについて、知っておきたいことを4つにまとめました。

ここから詳しく見ていきましょう。

知りたいこと1:「寂しい」と「淋しい」の意味は?

携帯やパソコンの漢字変換で「さみしい(さびしい)」と打つとき、ふだんはあまり意識せずにどちらか片方の漢字だけを利用しているという人もいるでしょう。

「違いもよく分からないし、相手に伝わればどっちでもいいかな?」と思っている人もいるのではないでしょうか。

しかし、漢字にはそれぞれ意味があって形を成しています。

「寂」と「淋」の漢字にはそれぞれどんな意味の違いがあるのでしょう?

「寂しい」の意味

漢字を定義するものに漢和辞典があります。

みなさん、一度は漢和辞典を使ったことがありますよね?

漢和辞典によると、「寂」という漢字には「さびしい、さびれる、しずか、音もなくひっそりとしているさま」という意味が書かれています。

また「人が死ぬこと、涅槃(ねはん)」とも書かれていることから、いわゆる仏教的な意味合いを帯びている漢字なのでしょう。

他にも日本的な言葉として「さび。閑寂さの中にある奥深さや趣(おもむき)」という意味もあるそうです。

「淋しい」の意味

一方、「淋」を漢和辞典で引くと、「水をそそぐ」とか「水が絶えずにしたたり落ちるさま」という意味が主に書かれています。

「淋しい」はサンズイがあるくらいなので、水に関する意味が強く、そのことから「涙が止まらないような悲しさ」を言うようになりました。

漢和辞典の「さびしい、乏しい、閑散としたさま」という意味に近いですね。

また、「淋」には性病の一種である「淋病(りんびょう)」の意味もあります。

最近はあまり聞かなくなりましたが、昔は「女遊びがヒドイとすぐ淋病にかかる」なんて言われるほどメジャーな性病でした。

知りたいこと2:「寂しい」と「淋しい」の違いや使い分け方

漢和辞典による「寂」と「淋」の違いについては分かりましたね。

それぞれの漢字には同じような意味もあれば、まったく異なる意味も含まれていました。

では、実際に携帯やパソコンで「さみしい(さびしい)」と打って漢字変換したいとき、「寂しい」と「淋しい」をどんな風に使い分ければいいのでしょう?

「寂しい」と「淋しい」の使い分け方をご紹介します。

「さみしい(さびしい)」と打つときにふと思い出してください。

「寂しい」は情景を表す

「寂しい」は、物音もなく人の気配すら感じない静かな状態であること、そのことにより結果的に寂しさを感じてしまうという趣の深い言葉です。

つまり「寂しい」は情景を表していると言えます。

周りが静かで人の気配もなく、寂しさを感じてしまうような環境の場合は、「寂しい」を使うのが適切です。

瀬戸内寂聴さんは京都に「寂庵(じゃくあん)」という名前の寺院をひらいておられますが、寂庵とはなんと趣深く仏教的な名前なんだろうと感じませんか?

「淋しい」は感情を表す

「淋しい」は、情景などは関係なしに、個人の感情にスポットをあてた主観的な言葉です。

相手のことを思うと涙が溢れるような気持ちのときや、孤独で悲しい気持ちになったときなどは、「淋しい」を使うのが適切です。

数ある歌の歌詞で「さみしい(さびしい)」と書くときにも、比較的よく使わえるのは「淋しい」です。

異性に恋い焦がれる歌の歌詞や、群衆の中を一人で歩く孤独な気分を歌った歌の歌詞などをチェックしてみるのも面白いと思いますよ。

「淋しい」は常用漢字として習わない

先にもご紹介したように、「淋しい」は常用漢字ではありません。

なので、教科書や新聞などを含めた公的な文書では「淋しい」が使われることはありません。

学校で漢字として「淋」を学ぶことがあっても、「さみしい(さびしい)」という漢字変換では必ず「寂」が使われているでしょう。

だからといって、一般的に使用する分にはどちらを使ったとしても問題ないので、ほとんどの人は特に意識せずに「寂しい」と「淋しい」の好きな方を使っています。

知りたいこと3:「寂しい」と「淋しい」の読み方

知りたいこと3:「寂しい」と「淋しい」の読み方
「寂しい」と「淋しい」の漢字の違いについては分かっていただけたと思います。

ところで、ふと疑問に残るのは、「寂しい」と「淋しい」の正しい読み方です。

携帯やパソコンで漢字変換するとき、「さみしい」でも「さびしい」でも同じように漢字に変換することはできます。

果たして「寂しい」や「淋しい」は「さみしい」と読むのが正解なのか、「さびしい」と読むのが正解なのか、どちらなのでしょうか?

「さみしい」「さびしい」どちらとも読める

「寂しい」や「淋しい」は、「さみしい」「さびしい」のどちらであっても読むことはできます。

しかし、公的な文書などで使用する常用漢字表では「さびしい」という読み方が常用であると表記されています。

このため、TV番組やラジオで使用されているのは「さびしい」です。

もともと「寂しい」や「淋しい」は、「さびしい」と読むのが主流だったのが、江戸時代頃に「さみしい」に変化したのではないかとみられています。

使っているうちに話し言葉が徐々に変化していったというわけですね。

書き言葉は「さびしい」が一般的

話し言葉としては「さみしい」でも「さびしい」でも、どちらを使っても差し支えありません。

しかし、文書で用いる際は、常用漢字表に記載されている「さびしい」を使うのが一般的です。

個人的な手紙のやり取りではあまり意識する必要はありませんが、ビジネスなどで公的な文書を作成する場合には、「さびしい」を使うほうが確実です。

「さみしい」と「さびしい」で使い方が違う

「さみしい」と「さびしい」はたった一文字違うだけですが、それぞれの意味合いが異なることから使い方が違います。

「さみしい」は主に人の心情を表現する際に使うことが多い言葉です。

「さびしい」は情景だけでなく人の心情にも使うことができます。

「どっちを使ったらいいの?」と迷った場合は、「さびしい」を使うといいでしょう。

知りたいこと4:「寂しい」と「淋しい」の使い方

「寂しい」と「淋しい」が持つそれぞれの意味を見てきました。

「これまで意識してなかったけど、実は奥が深い言葉なんだな」と思った人もいるでしょう。

漢字が持つ意味の趣に興味をそそられた人がいたら幸いです。

では、実際に文章で「寂しい」と「淋しい」を使いたいときは、どんな風に使うのがいいのでしょうか?

「寂しい」と「淋しい」の一般的な使い方についてご紹介します。

「寂しい」の使い方

「寂しい」は、情景や人の心情のどちらにも使用することができる言葉です。

例えば、「田舎道で寂しい風景が続いている」といった風景の様子を表す際に使ったり、「仲の良い友達と別れて寂しい気持ちになった」など人の心情を表す際にも使えます。

ビジネスなどで公的な文書を書く場合にも、常用漢字として登録されてる「寂しい」を使うことを覚えておきましょう。

「淋しい」の使い方

「淋しい」は、人の心情を主に表す言葉です。

一般的に「寂しい」よりもずっと強く感情を伝えることができるのが「淋しい」です。

例えば、「遠距離恋愛の彼氏となかなか会えなくて淋しい」や「私だけ旅行に誘われず淋しい」といった心情を表す際に使います。

「淋しい」は常用漢字ではないので、公的な文書には使用できませんが、個人的な思いが強い手紙やメール、文芸作品などに使用することで、個人の真っ直ぐな思いを伝えることができます。

「寂しい」と「淋しい」を英語で言うと?

日本語での「寂しい」と「淋しい」は、主に情景にも使えるものか、心情のみに使えるものかにポイントがありました。

似ている2つの言葉ですが、漢字の意味をよく知ることで、日本語ならではの趣き深さが感じられる言葉だと分かりましたね。

では、英語で「寂しい」と「淋しい」を表現すると、この2つの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか?

英語では使い分けづらい

実は英語で「寂しい」や「淋しい」を表現しようとすると、両者に特別は違いはありません。

一般的に「寂しい」「淋しい」は「lonely、lonesome、solitary、unfrequented」といった英訳がされます。

英語では日本語のような些細なニュアンスを区別して表現しないことが多いため、「寂しい」や「淋しい」も使い分けがしにくいのです。

「寂しい」と「淋しい」の使い方をマスターしよう!

「寂しい」と「淋しい」について見てきました。

政府が決めた常用漢字は「寂しい」ですが、政府が決めたからといって、それを守る必要もないのが言葉です。

漢字が持つ本来の意味やニュアンスを理解して、自分が表現したいことが適当に表現される漢字はどちらなのか? を自分で決めて使うというのが、教養あるオトナの文章作法(漢字作法?)です。

「寂しい」と「寂しい」を自分なりに使いこなせるようになるといいですね!

Written by ひとみしょう

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