さあハイヒール折れろ~こんな対談するんじゃなかった~ 第11回 恋人には1日1個のスタンプを -マキヒロチさん

本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ――。この連載では、松居大悟が、恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわしていきます。今回は前回に引き続き、漫画『いつかティファニーで朝食を』著者の漫画家・マキヒロチさんとの対談をお届けします。

マキヒロチ
第46回小学館新人コミック大賞入選。ビッグコミックスピリッツにてデビュー。リアルな人間模様を描いたストーリー漫画から、高級時計の専門漫画、ギャグエッセイなど幅広いジャンルで活動中。現在@バンチ(新潮社)にて「いつかティファニーで朝食を」、ゴーゴーバンチ(新潮社)にて「創太郎の出張ぼっちめし」などを連載中。

始まりはタイミング次第

松居大悟さん(以下敬称略)「今お付き合いしてる方とはどこで知り合ったんですか?」

マキヒロチさん(以下敬称略)「私の師匠で花津ハナヨさんという人がいるんですけど、彼女と旦那さん夫婦のパーティーで出会ったような感じで。実はそれより4~5年前にも一度会っていて、そのときも一応アピールを受けていたんですけど、当時は他につき合っている人がいて、私の扉の中には一人しか入れないからイヤですよと断って。でもその扉の中の人が出て行っちゃった後にまた再会したので、じゃあごはんに行きましょうみたいなところから始まったんです」

松居「扉の中の人が出て行った後はどんな状態でしたか? しばらく空っぽにしておきたかったりします?」

マキ「ああー、そうですねえ。前は別れた後の扉が結構閉まっていたんですけど、そのときは放心状態でガバーッと開いてましたね」

松居「逆に開きっぱなしだったんだ(笑)」

マキ「そう(笑)。もう廃人みたいでしたね。それまでは4歳年下の彼と遠距離恋愛をしていたんですけど、相手が全然私のことを好きじゃなくて、長くつき合っていたわりにはずっと私の片思いみたいな感じで」

—自分からは告白せずに、自分のことを好きじゃない相手と、どうやっておつき合いが始まったんですか?

マキ「最初は相手も好きっぽかったんですけどねえ。『いつかティファニーで朝食を』の4巻に文学少女が出てくるんですけど、彼女の失恋はほとんど自分のことを描いたような感じで。漫画の中の二人はつき合っていないんですけど、私自身はつき合っていながら片思い状態で、彼はずっと他に好きな人がいたんですよね。結局”ぶっちゃけて言うけど、ずっと前からずっと好きじゃない”と言われて、結構頑張ったのになあ……って感じでボケーッとしていたら、いろんな人が扉から入ってきては出て行った、みたいな(笑)」

松居「カギもかかっていないから(笑)」

マキ「そんなところにずっと通ってくれるような人が現れたから、つき合い始めたという感じです」

松居「へえー」

自分と違う人に惹かれる?

マキ「私の今の彼は、私のブスでデブで面白いところがいいらしくて」

松居「どういうことですか?」

マキ「彼は放送作家なんですけど、そういう世界ではレースクイーンやモデルを彼女にするのが一つのステイタスのようになっていて、それをダセェと思っているようなちょっとヒネくれた人なんです。だから私のことを”君はそうじゃないんだ”と言っている彼自身がうれしそうなんですよ」

松居「ややこしいですね(笑)」

マキ「あと、漫画を描いてるということをリスペクトしてくれてます。でも、さっきの話に戻りますが漫画を認めてもらいたいというより相手が何を喜んでくれるかによって、恋愛の仕方は変わっちゃうかも。彼氏が料理を喜んでくれる人だったらそれを頑張るし……」

松居「おおー!」

マキ「会うことが一番の人だったら、少しでも会えるように努力するし」

松居「へえー。これは男目線ですけど、マキさんには相反する二つの要素が流れている気がして。男が嫌いと言いつつも彼氏にはすごく尽くすし、相手の好きな自分になろうと努力する。その二つがお互いに引っぱり合っているから、異性に対する興味というのは、絶対に高いと思うんですよ。それは漫画を読んでいてもわかるし、作品にちゃんと還元されているということだから、健全な気はしますよね」

マキ「ああー、なるほど」

松居「彼氏の仕事はチェックしますか?」

マキ「見ますね」

松居「感想を言ったりはしない?」

マキ「面白いときはすごい言います、ツイッターで全世界に向けてつぶやいたりもします(笑)。松居さんがかつてつき合った――彼女かどうかわからないその人は、感想を言ってくれましたか?」

松居「……全肯定してくれました。全肯定してくれたから、どんどん好きになっていったんですけど。でもこの対談シリーズを経て、そういうところに甘えてはダメなんだと思うようになりました。そこに甘んじようとするから、自分を甘やかして、自分が王様である状態を保とうとしてしまうんじゃないかと思って」

マキ「全肯定してくれる人と、自分にはない視点をもたらしてくれる人と、今はどっちを求めているんですか?」

松居「一周回って、相手が自分に興味がなかったりするのも、意外と燃えたりするなあと思っていて。褒められてウフフみたいな状態になると、調子に乗り続けてしまうんで」

“会えないの?”って言われたくない

松居「今の彼とはどのぐらいのペースで会ったりしてます?」

マキ「毎週末には会うようにしていますね」

松居「女性はつき合うと恋愛が一番になりがちじゃないですか。僕はどうしても常に一番にはできなくて、それでモメることが結構多くて……」

マキ「女はそういう生き物だとは割り切れないんですか?」

松居「恋愛が一番の生き物として?」

マキ「うん」

松居「いや、割り切るんですよ。最初は割り切るし、つき合うときにも言うんですよ。仕事優先になって、連絡が取れなくなるときがあるかも、と」

マキ「そこで相手は”そんなのイヤだ~”とは言わないでしょ?」

松居「ぜんぜん」

マキ「”全然いいよー”って言うでしょ」

松居「むしろ”頑張って!”みたいな」

マキ「それが信じられないんでしょ?」

松居「いったん信じる! いったん信じるけど、しばらくたって忙しいときに”会えないの?”みたいな連絡が来ると、ちょっと話が違うなと」

マキ「でもそれは、女としては、あんまり”会えないの?”って言わないのもちょっとかわいげないかなあと思って、何となく、まぁたまには言っておくか! ぐらいの感じじゃないの?」

松居「あ、それだったらいいんですけどね」

マキ「そうじゃないんですか?」

松居「いや……どっちだったんだろ」

今日からできる、一日一個スタンプ作戦!

マキ「とはいえ恋人同士は、少なくともどっちか一人は相手の様子をうかがっていないと、二人がバラバラになっちゃいません?」

松居「恋愛ってちょっとずつちょっとずつ積み重ねるじゃないですか。それが僕は苦手で。毎日コツコツとポイントを貯めるんじゃなくて、休みの日や記念日に頑張って、一気に稼ごうとしちゃうんですよ」

マキ「”会えないの?”って言われたくないんだったら、リスクヘッジを自分でしちゃったほうがいいんじゃないですか?」

松居「どうやって?」

マキ「絵文字のスタンプだけでも一日一個は必ず送る、とか。それだけでも全然違うんじゃないですか?」

松居「あ、そうなんですか!?」

マキ「うん。あ、生きてるんだ、ちょっとは思い出してくれたんだ、と思えるぐらいでいいんじゃないですか。【あ】とか【う】とか一文字でもいいし」

松居「【あ】でも【う】でもいいんだ!」

マキ「朝起きた瞬間に送る、ごはんを食べるときに送る、と習慣づけておけば」

松居「それって何なんですかね? それは恋愛なんですか(笑)?」

マキ「わかんないけど(笑)。でもさ、いつも松居さんのことを考えてくれる奇特な人がいらっしゃるとして、その人が”今日は松居くん何してるのかなあ?”みたいに思っているところに、一言でも送られてたら気分も盛り上がるだろうし、満足してその後は自分の日常に戻りますよ」

松居「そういうことか。そこでラリーをする必要はないんですか?」

マキ「うん。もし彼女から同じように返ってきたら、それは無視してもいい」

松居「【い】って返さなくてもい?」

マキ「いやいや、そこで終わらせていい(笑)。そういう形でリスクヘッジしていけばいいんじゃないですか? 溜めなきゃいいじゃん」

松居「なるほどなるほど、日常生活の一部にしてしまえば」

マキ「その相手と長いスパンでつき合っていきたいならね」

“覚えてるよ”の気持ちを送る

松居「一日一スタンプができたらいいなとは思うんですけど、でもなんか、忘れちゃいそうなんですよね……」

マキ「だったらアラームでもかけておけばいいんじゃないですか?」

松居「ああー」

マキ「外で飲んでいたとしても、アラームが鳴ったからスタンプ一個だけ送っておこう、みたいな」

松居「それって女性的にはウザいみたいには思わないんですよね?」

マキ「ぜんぜん。ウチの場合は特に連絡はしなくても、寝る前だけに毎日スタンプを送り合ってます」

松居「マキさんが送って、相手からも返ってきて?」

マキ「その日によります、早く寝るほうが先に送ります。”好きだよ”というより、”覚えてるよ”という気持ちでいいんじゃないですか?」

松居「考えてるよ、っていうことですよね」

マキ「だって、一日に一秒ぐらいは思い出すでしょう? それを相手に教えてあげたらいいんじゃないですか?」

松居「そうですね! それを僕はよこしまな気持ちとして排除しちゃってましたね……お互いに忙しかったらそういうルールを作ったほうがいいのかも」

マキ「そのやり取りは相手が彼女じゃなくても、友達だってうれしいじゃないですか。なんなあら彼女だと思わなければいいんじゃないですか?」

松居「何を言ってるんですか(笑)」

マキ「彼女だと思うから重たくなるんじゃないの?」

松居「ああ、それもちょっとあります、気負いというか」

(つづく!)

<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団”ゴジゲン”主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。近年はクリープハイプ、大森靖子らアーティストのミュージックビデオも手がける。次回監督作は映画「スイートプールサイド」2014年公開予定。

構成: 那須千里

タイトルイラスト: 石原まこちん

(松居大悟)


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