好きな人と気の合う人、どちらの恋がうまくいく?

好きな人には好かれないのに、タイプでない人に好かれる

「好きな男には好かれず、好きでもない男に告白される。私の恋愛、どこかうまくいかないんですよね」

そうつぶやいたのは、28歳になるアユミさん(仮名=以下同)。学生時代から、自分が告白してつきあうこと数度。そのたびにうまくいかなかったのだという。

「私が好きになるのは、唯我独尊のオレ様タイプの男性。他人に迎合せず、ひとり我が道を行く人を追いかけて振り向いてもらうのが好きなんです。でも実際にそういう人とつきあうと、どうしてこんなに好きなのにわかってくれないの! って、ひとりでキリキリしちゃって……」

こういう話は、よく耳にする。恋愛が長続きしない、好きになればなるほど最後はフラれると嘆く女性も少なくない。

中肉中背、かわいらしいタイプに見えるアユミさんだが、実際は非常に気が強いと自己分析する。

「私を好きだとアプローチしてくれる男性もいないわけではないんですが、そういう男性は、私をかわいいタイプだと思い込んでいるんですよね。だから、とりあえずデートした段階で、相手がドン引きしているのがわかる。ギャップが魅力になる、なんてよく言うけど、本当かなと思っちゃう。実際、私はギャップで損しているから。でも、まあ、私も相手を自分の理想にあてはめ、こういう人だと思い込んで近づいているのかも。だから長続きしないのかなあ……

好きだから自己規制して、好きだから空回り

「自分が好きな人」と「気の合う人」が違うと思っている人は少なくないだろう。そして、「合う人」とは友だち止まりで恋愛には至らないものだと思い込んでいないだろうか。あるいは、「合う人」を好きにはなれないと決めつけていないだろうか。実際、そういうことは多々あるようだ。

「私も自分から好きになった人と2年間つきあったけど、結局、疲れて別れました」

そう話してくれたのは、ケイコさん(31歳)。

「本当に好きだったから、つきあっているときも言いたいことが言えない。これを言ったら彼がどう思うだろうと考えすぎて、自分をさらけ出すことができなかった。いつも彼の気持ちを勘ぐっては空回り……。決定的だったのは、彼の部屋でごはんを作って待っていたのに、彼が帰ってきたのは明け方。寝ずに待っている私と、彼の好きなものばかり並んでいる食卓を見て、彼が『誰がこんなことしてくれって言った?』と……。彼が喜んでくれると思って作ったのに、実際は彼が望んでいたわけじゃなかったんだと思ったら、気持ちがすーっと冷めていきました」

好きだから何かしてあげたい。それは大事な感情ではあるが、いつも相手がそれを望んでいるとは限らない。愛情はいつでも報われるわけではないのだ。

言いたいことが言える「気の合う人」と出会って……

そのことがあってから、ケイコさんは恋愛に臆病になった。好きな人とつきあっても、思い切り「好き」と言えなくなった。またいつ引かれるかわからないのが怖かった。

「しかも私、嫉妬深いし。嫉妬って愛情のひとつだと思うんですよね。だから彼と連絡がとれないとき、いつももしかしたら別の女と……と考えると、胸がかきむしられるように苦しくなる。でもそうすると、ああ、これは私が彼を愛している証拠だって少し安心したりもするんです」

この苦しさが愛なのだと、自分で自分の気持ちを追いつめていった。

そうして「不遇な20代を過ごしていた」ケイコさんだが、1年前に職場に異動してきた2歳年下の男性と、ときどき食事に行くようになった。音楽の趣味も合うとわかってライブに行ったり、映画を観に行ったり。

「私としてはかわいい弟分のつもりだった。だから何でも言いたいことを言えたんですよね」

彼につきあっている女性がいることも知っていた。姉貴分として、彼に女性の気持ちを教え込もうとしていた面もある。

「3ヶ月くらい前かなあ、彼が突然、『彼女と別れた』って言うんですよ。長くつきあっていたみたいだから、どうしちゃったのと聞いたら、『オレはケイコさんが好きだ!』と、いきなり道ばたで叫んで抱きしめられました。え、え、ちょっと待って、という感じだった」

そのあと、一緒に入ったバーで彼はぽつぽつと自分の気持ちを語った。

「ケイコさんと一緒に過ごす時間が本当に楽しかった。それに反して、彼女といる時間が苦痛になってきて……。ケイコさんになら何でも言えるし、笑うツボが一緒。僕はケイコさんほど前向きなタイプじゃないけど、ケイコさんといることで強くなれる。いつしか本気で好きになっていた」

彼のそんな気持ちを聞いて、ケイコさんも心を動かされた。

今までの恋愛とは違う楽しさが見つかった

「正直、私のタイプじゃないし、最初から恋愛対象じゃないと思い込んでいたけど、考えてみれば彼と過ごした時間は、私も心の底から楽しいと感じていた。言いたいことも言えて、しょっちゅう笑ってた。今までの恋人に対しては、私はそこまで気楽に自分をさらけ出せなかったし、恋愛感情が邪魔して言いたいことも勝手に自主規制してた。そう気づいたんです。でも一方で、これは友情にすぎない、これを恋愛と言っていいのかと悩む自分もいて……」

彼女は、そんな自分の気持ちを彼に正直に伝えた。

「僕を、男として見ることはできない?」

しばらく黙っていた彼が、突然そう言って、ケイコさんの手を握った。とりあえず、一緒に夜を過ごしてみた。セックスをする時間も楽しかった、とケイコさんは言う。

「そこから恋愛感情も出てきましたけど、友だちとしての関係が長かったので、今までの恋愛と違って戸惑いました。たとえ嫉妬したとしても、今までみたいに苦しくない。彼に直接、言えちゃうんですよね」

そして、彼女は悟ったのだという。

「それまでの私は結局、自分の理想の男性像を彼に勝手に投影して、彼がそこから外れた言動をとると、ひとりで怒ってひとりで疲れていた。でも今回は、彼の実像を恋愛感情抜きで見ていたし、そこで気が合う、ウマが合うと実感していたから、ヘンな恋愛感情に振り回されずにすんだ。恋愛に過剰な期待を抱いていたけど、ひとりの人間同士として気が合うか合わないかのほうが大事なんでしょうね」

好きな人とどうしてもうまくいかないと悩んでいる女性の場合、自分の中の恋愛感情に負けてしまい、歪みが生じているのかもしれない。理想を投影せずに相手を見て、取り繕っていない自分を見せることからはじめてみるのはどうだろうか。

だからといって、ケイコさんのように気が合う男友だちと恋愛すればいい、という単純な問題ではないだろうが、気が合う人を好きになれれば、今までの恋愛パターンとは違う楽しさが見つかるのかもしれない。

(文:亀山 早苗)