美容整形と幸せ……第3回『ダウンタイムと痛み』(元看護師・現役風俗嬢 yuzuka)

こんにちは、yuzukaです。
現役風俗嬢でありながら、美容外科、精神科の元看護師という肩書きを持つ私が、「美容整形と幸せ」について語るこちらの連載。
第3回は、「ダウンタイムと痛み」についてをお話したいと思います。

腫れない、痛くないは本当か

近頃の美容整形外科の宣伝文句は、とにかくこのふたつに偏っています。「ダウンタイムはありません」「ほとんど腫れません」「当日から外出が可能です」
美容整形外科のホームぺージを検索したことがある方であれば、そんな言葉が大きく掲げられているのを、皆さん目にしたことがあると思います。

事実、私が働いていたクリニックでも、この宣伝文句を大々的に売り出した施術がいくつもあり、その言葉を信じた多くの患者様が来院されました。

この宣伝文句がとくに多く使われるのが、お顔の手術で言えば「二重の埋没法」、体の手術でいえば「胸へのヒアルロン酸注入」です。

私も美容整形外科で働く前まではライトなイメージだったこのふたつの施術、実際に「痛くなくて」「腫れない」のでしょうか。
まずは「胸へのヒアルロン酸注入」を例にとって、お話したいと思います。

胸へのヒアルロン酸注入は、あっという間?

皆さんはこの、「胸へのヒアルロン酸注入」について、どんなイメージをお持ちでしょうか? 実は私は、「とっても簡単であっという間に終わるもの」だと思っていました。メディアや宣伝広告では、「細い注射で、1箇所に穴を開け、ヒアルロン酸を注入します。あっという間に終わります」なんてことが書かれているし、バッグを胸の中に入れ込む所謂(いわゆる)「典型的な豊胸手術」よりも、もっと手軽で簡単なものだと思っていたのです。

しかし、実際に現場で見た「胸へのヒアルロン酸注入」は、私がイメージしていたものとは違いました。

私が働いていたクリニックでは、この手術を行う際、「静脈麻酔」をおすすめします。つまりは、眠って受けることをおすすめしているわけですね。実は、最初にそのことを聞いた時、頭の中にはてなが浮かびました。「ヒアルロン酸注入をするだけなのに、眠らせる必要があるの? っていうかそもそも『手術』になるの? ただの『処置』ではなくて?」

私の中で「胸へのヒアルロン酸注入」は、他の部位へのヒアルロン酸注入のイメージと、対して変わりがありませんでした。「鼻」や「顎」に入れる時と、なんら変わりがないと思っていたんです。そう考えていたので、「静脈麻酔で麻酔科のドクターをつけて、大掛かりにする『手術』だ」というイメージが湧かなかったわけですね。

しかし、実際にこの施術を介助するようになり、そのイメージは一変します。

胸のヒアルロン酸注入の実際

最初に結論を言ってしまえば、この手術には恐らく想像以上の「痛み」を伴います。「鼻や顎、涙袋なんかは、平気だったのに?」と思われる方には、まず入れるヒアルロン酸の種類が違うということを想像して頂きたいです。
鼻や顎に入れるタイプのヒアルロン酸は、比較的粒子が細かく、硬度が高いです。それに比べて胸に入れるヒアルロン酸は、ひとつひとつの粒子が大きく、柔らかい。想像してみたら分かりますよね。鼻に入れたヒアルロン酸が、胸と同じようにプニプニしていては、不自然です。

その「粒子が柔らかく大きい」ヒアルロン酸を、例えば1カップ大きくしようと思えば、片胸約「100cc」、胸の中に注入します。水を注入するわけではありません。粒子の大きなものを注入するということを想像すれば、自ずと、今まで想像していたよりもずっと太い針を使うのでは、ということが浮かんでくると思うのですが、その通りです。「細い針でプチっと注入」ではありません。私が働いていたクリニックでは、まずは皮膚の表面を麻酔し、メスで切り込みを入れて、その切り込みから、太い針を差し込んでいました。

この時点で、かなりイメージと違ってくるのではないでしょうか。既に「注射で簡単に注入」という次元ではありません。

この「施術」は裸になり、イソジンで消毒し、布をかけられ、オペ着を着た看護師がついて行う、れっきとした「手術」なのです。

また、痛みを伴うのにはヒアルロン酸の種類が違うという点以外にも理由があります。
胸のヒアルロン酸注入は、乳腺下と大胸筋下という場所に行います。胸の1箇所に注入するのでは形が歪になりますから、開けた穴に差し込んだ針を四方八方に動かして、「もともと何もなかった空間」に、押し入れる形で「ヒアルロン酸」を注入します。
痛くないわけがありません。組織と組織の中に、「異物」をねじこむのですから。
だいたいの患者さんは「思っていたより痛かった」と言います。その日のうちから「お仕事ができないこともない」ですが、おそらく広告を鵜呑みにして、軽い痛みを想像しすぎた患者様からすれば、想定外の苦痛が待っているのではないでしょうか。

腫れないわけがない。痛くないわけもない

今回は「胸のヒアルロン酸注入」を例にとりましたが、他の施術にも同じようなことが言えます。例えば「腫れない」のうたい文句で言えば、前述した「埋没法(二重術)」なんかがそうですね。

多くの患者様は、「その日のうちに外出できる」前提で手術にきます。確かに、あながち嘘ではありません。目が開かないほど腫れるケースは稀ですし、こちらも胸のヒアルロン酸注入同様、「外出できないわけではない」という言い方が正しいでしょう。
その日のうちは、手術で切り貼りしたからという理由以外に、麻酔薬を注入したぶんの腫れもあります。その麻酔薬がようやく吸収されてからも、だいたい最低1週間くらいは、「かなり泣き腫らした後の目」くらいには腫れるケースが多いです。人によっては1ヶ月以上腫れた方もいました。個人差があるといえばそれまでですが、こちらもやはり、広告からのイメージよりは、「腫れるじゃないか」という印象が強いわけです。

美容整形外科での施術は、「手術」です。いくら簡単だとはいえ、皮膚に穴を開けたり、麻酔を入れたり、切り込んだり、縫ったりする。考えても見てください。少しの怪我でも腫れたり痛むのが「人体」ですから、なんのダメージもないなんて、ありえないのです。
私の働いていたクリニックは、この辺りの説明が、少し悪徳な部類に入りました。「個人差がありますが、ほとんどの人は腫れません」と大袈裟に説明し、その日のうちに手術をさせてしまうわけです。

実際に手術をしたキャバクラ嬢の女の子が、想定よりも遥かに腫れてしまい、「こんなに腫れてしまっては仕事に行けなくて、今月のノルマをこなせない」と泣いたり、手術の後に、遠距離恋愛の彼と2ヶ月ぶりのデートをしようとしていた女の子が、「これじゃあドタキャンするしかない」と、絶望しているのを目の当たりにしたこともあります。

しかし、世の中に出ている広告が「美容整形のイメージをライトに、手軽に見せたい」と働いているため、ツイッターからの相談でも、「ダウンタイムがあると困る」という前提の相談が寄せられるケースが、後を絶たないのです。

私はこの現状を、恐ろしく思っています。手術の説明は本来、「最悪の場合」を想定して行うべきです。それが医療です。「大丈夫だよ」なんて甘い香りで誘き寄せ、引っかかった後は「知らないよ」なんて……詐欺と同じです。

ではその上で、どうすれば「実際の痛みや腫れについて、知ることができるのか」という話をしたいと思います。美容整形外科での手術を行う時は、広告に騙されず、カウンセリングでの対応をチェックしましょう。
「とにかく今日手術した方が良い」「ほとんど腫れないから大丈夫だよ」なんて前のめりで手術をすすめるクリニックは、まず信用できません。具体的にどれくらいの期間、どの程度腫れるのかを、厳しいくらいの口調で明確に提示してくれるクリニックこそが、「安心できるクリニック」です。
情報過多の時代。人生を変える手術なのですから、勢いやなんとなくで甘い言葉に縋り付く(すがりつく)のではなく、自分でも学び、自分の意思で「選択」しましょう。

甘い話には「罠がつきもの」なのです。

※今回の記事は私が勤めていたクリニックで行なっていた施術を参考に書いたもので、全てのクリニックに当てはまるものではありません。

 

Written by yuzuka