【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第2話「ブルーな果実」

~あらすじ~

セリカは、大手家具メーカーに勤める27歳OL。2年前、元カレに浮気されてフラれた過去をひきずりつつ、ときめきを求め、好みの男を見つけてはある妄想をしてしまう癖が。

営業部のプレイボーイ、企画部のイケメン上司、人事部の年下男子……と、妄想を駆り立てる相手には事欠かない。

めくるめく万華鏡(=カレイドスコープ)のように変わるセリカの脳内ワールド。それは、彼女の現実に恋人を引き寄せるスパイスになるのか?

第2話 ブルーな果実

パスタ店のスタッフルーム

さっきから私たちのテーブルに注文を聞きにきたり、料理を運んできたりする男が気になっていた。

 たぶん30代前半ぐらいで、ちょっとしたアルバイトというより慣れた正社員? という感じで、細身で、切れ長の目に眼鏡をかけていて、流れるような無駄のない動作。女性の客にとっては、「オシャレな執事」みたいな雰囲気がとても心地よい。

 デザートが終わった後、理沙と鈴子さんに「ちょっと電話してくるね」と言って席を立った私は、化粧室の前でスマホを手に取った。

と、その瞬間、いきなり近づいてきたそのボーイに、無言で腕をつかまれ、引っ張られ、化粧室よりも奥にある、スタッフルームに連れ込まれる。

 驚きで声も出ない私に、ボーイは「どこに電話しようとしてるんですか? そんなにお急ぎの用事ですか?」と、笑顔で言う。

 口元は笑っているけれど、眼鏡の奥の瞳はどこか冷たい眼差しで……ちょっとゾクッとする。

 ボーイは視線をそらさないまま、少しずつ私に近づいてくる。私はあとずさり。

 背中が壁に当たって逃げられない状態になると、ボーイの手が私の耳元をかすめ、その壁に。私は身動きができない状態になってしまう。

 

ちょっと待って。

 こ、これは……あの、例の……憧れの……

 「壁ドン」じゃないの?!

 ボーイは、笑みを消した唇をそっと私の顔に……。

 きたあああああ!

 

「セリカ?」

 理沙の声で、我に返る。

 「何ボーっとしてんの? 出るわよ。昼休み、終わっちゃうよ」

 理沙たちには気づかれないよう、小さくため息をつく。お会計の時に店内を見返すと、ボーイはこちらには目もくれず、別のテーブルに柔らかな笑顔を振りまいていた。

 

まあ、こんなことは、日常茶飯事なのだ。またやってしまった。もうほとんど病気だ。

【恋愛小説】私のカレイドスコープ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第2話「ブルーな果実」

第一営業部オフィス

午後、私は急ぎの書類に営業部長の印鑑が必要だからと言われ、階上にある第一営業部オフィスに向かった。

エレベーターでは、先に乗っていた男と二人きりになった。

ても、この時は、妄想も白日夢もいっさい湧いてこなかった。だって、乗っていたのは……5~6歳くらいの小さな男の子だったから。

 「僕、一人なの? どんな御用で来たのかな?」と尋ねると、「パパのところに来たの」と言って、次の階で降りて行った。

 

社内でも花形と言われている営業部は、さすがにいつも臨戦態勢という感じで、活気があって賑やか。

 私は言われたとおり、第一営業部長のデスクに行き、押印してもらい、きびすを返した。

 すると、一人の男の姿が目の前に飛び込んで来た。「わっ!」と思わず声がもれた。

 営業部の工藤が立っていた。しかも、私が声を出したためにばっちり目が合ってしまった。

 

工藤さんは常に成績トップの営業部のエース。社長の大のお気に入りで、会社の半分は工藤さんでできていると言ってもバチは当たらないくらいの、稼ぎ頭だった。

 そして、誰もが憧れるエリート営業マンであるとともに、ハーフのような非の打ちどころのないイケメンぶりと長身が特徴のお方でもあった。

 仕事できる男×イケメンを、女が放っておくわけない。この会社に入った女子社員なら、誰もが必ず一度は通る「工藤さんすてきぃ~~~!」の道。

 工藤さんの方も、いわゆる「キレイどころ」と言われる女子社員のだいたいを、食ってるとか、食ってないとか……そっち系のうわさには事欠かない。

 そしてこの私が、そんな彼で妄想しないわけない。これまで、何度も私の妄想世界に登場してくださる、レギュラーメンバーの一人である。

 今日の彼との妄想(情事)は、ズバリ、エレベーターの中だ。さっきのリベンジである。

【恋愛小説】私のカレイドスコープ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第2話「ブルーな果実」

 

私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~」は、毎週日曜日配信!
次回をお楽しみに!!

 

 

Written by 吉井ベロニカ