【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第8話「真実はグリーン」

~あらすじ~

セリカは、大手家具メーカーに勤める27歳OL。2年前、元カレに浮気されてフラれた過去をひきずりつつ、ときめきを求め、好みの男を見つけてはある妄想をしてしまう癖が。

営業部のプレイボーイ、企画部のイケメン上司、人事部の年下男子……と、妄想を駆り立てる相手には事欠かない。

めくるめく万華鏡(=カレイドスコープ)のように変わるセリカの脳内ワールド。それは、彼女の現実に恋人を引き寄せるスパイスになるのか?

第8話「真実はグリーン」

社内ラウンジ

私は、理沙と桐生先生のことを本人に尋ねてみる決心をした。

もし、二人がつきあっているとか、昔関係があったとか、そういう真実が出てきたとしたら……

 

私はもう、桐生先生のことを忘れてしまうのかな。

何事もなかったように、このビルの一室で働いて、また、妄想に明け暮れる日々に戻るのかな。

 

そんなことを思いながら、理沙とラウンジに向かった。

 

ラウンジ

ラウンジの入り口で、たまたま天野君と一緒になった。

「セリカ先輩! お疲れ様です」

天野君は爽やかに微笑んだ。

 

「あれが噂の“総務部の新星”? イケメンねえ」

理沙は、少し離れたところでコーヒーを飲んでいる天野君を見てそう言ったが、私は答えなかった。

「セリカ? どうしちゃったのよ。ずっと怖い顔して」

「あのね、理沙、今から聞くことに正直に答えてほしいの」

「う……ん。なに?」

 

私は意を決して、言った。

「この前ね、理沙が男の人とカフェにいるのを見たの」

「カフェ? いつ?」

「インフルエンザで休む前の日」

理沙は空を見つめて「えーっと」と頭をめぐらせているようだったが、何か思い出したように表情を変え、真顔になった。

「ああ……桐生さんね」

私はこくんと頷いた。理沙が「それがどうしたの?」と尋ねたので、私は深呼吸して、

「あの時、理沙、泣いてたよね。二人の雰囲気、普通じゃないなって……だから思ったの。理沙、桐生先生とつきあってるんじゃないかなって。社内の女の子たちが桐生先生の話題で持ちきりって時も、理沙だけは興味なさそうにしてたし、それがかえって、いつもの理沙と違うなって思って。だから、私……」

そこまで一気にしゃべって、私は言葉につまった。

理沙はそんな私の様子にびっくりした顔をしたけれど、それでも、しばらくは黙ったままだった。

 

そんな私たちの様子を、天野君がじっと見ていることに、その時の私は全然気づいていなかった。

【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第8話「真実はグリーン」

やがて、理沙が口を開いた。

「やっぱり、私って男の人といるとすぐに“つきあってる”とか“普通の関係じゃない”とか思われちゃうんだね。」と少し笑った。

私はとっさに「ごめん、そんなつもりじゃ……」と言いかけたが、理沙はやさしく私を制し、続けた。

「ちゃんと話すよ。セリカにはいつか言おうと思ってたから。私、みんなが思っているほど、簡単に男と付き合ったり、寝たりするわけじゃないのよ? ただ飲んだり食べたりして騒いで、さっさと家に帰るの。誰といても、心の底から楽しいと思えない。一緒にいて心の底から楽しかった人は、好きになった人は……一人だけなの」

 

それが桐生先生?

そう感じた瞬間、涙がにじんだ。けれど……

 

「その人……桐生さんじゃないわよ」

「え?」

 

肩の力が抜けた。

 

理沙が忘れられない人というのは、彼女が大学時代につきあっていた人で、K大の医学部に通っていたという。

同じところを卒業した桐生先生の後輩でとても仲が良かったことから、当時、彼も交えて桐生先生とは何度か会ったことがあるというのだった。

外見は飛びぬけてかっこいいというタイプではないけれど、とても穏やかで、誠実で、包容力のあるやさしい人だったという。

 

「だけど、私との待ち合わせ場所に来る途中にね、事故にあっちゃって……私をおいて、逝っちゃったの」

 

以来、理沙はその人のことを忘れることができなかった。

あの日は、久しぶりに再会した桐生先生に誘われ、お茶を飲み、亡くなった人を偲んで昔話をしていただけだと言う。

 

私は、桐生先生と理沙の関係が、想像していたものと違っていて胸をなでおろした。あの涙も、その人のこと思い出して流したものだとわかった。

その反面、知らないところで理沙がそんな心の傷を抱えて生きていたことに、胸がつまる想いになった。

 

「理沙、何も知らずにごめんね」

と言うと、理沙は「大丈夫よ」と笑い、すぐに、

「で……セリカ、桐生さんが好きになっちゃったのね」

と、さっきとは別人のような、生き生きとした表情で言った。

「いや……あの…」

「嘘ついてもダメよ。バレバレじゃん」

私と理沙のやりとりは、次第にいつものような明るい流れに戻っていった。

【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第8話「真実はグリーン」

 

第1話から読みたい人は……
私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~
次回をお楽しみに!!

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