【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第9話 「深紅の誘い」

~あらすじ~

セリカは、大手家具メーカーに勤める27歳OL。2年前、元カレに浮気されてフラれた過去をひきずりつつ、ときめきを求め、好みの男を見つけてはある妄想をしてしまう癖が。

営業部のプレイボーイ、企画部のイケメン上司、人事部の年下男子……と、妄想を駆り立てる相手には事欠かない。

めくるめく万華鏡(=カレイドスコープ)のように変わるセリカの脳内ワールド。それは、彼女の現実に恋人を引き寄せるスパイスになるのか?

第9話「深紅の誘い」

一か月後

月に一度の臨時医務室に、今月も桐生先生が来た。またまた、社内の女の子たちは色めき立って、初日から健康相談に押しかけていた。

 

私は、桐生先生に会いたくて仕方ないのに、他の女の子たちと一緒と思われたくなくて、どうしてもそういう気持ちになれなくて、そわそわしたおかしな気持ちのまま過ごしていた。

理沙は「桐生さんとのこと、応援する! 奥さんが亡くなってから、ずっと一人だって言ってたわよ。恋人いないはず!」と言ってたけれど……

 

「奥さんってどんな人だったの?」

「私も見たことないの。美人タイプではないけど、可愛くて明るい人だったって聞いたことあるわ」

「そっか」

 

やっぱり、勇気が出なかった。私が、奥さんに勝てるわけないし。

これ以上好きになって、苦しみたくない。

なのに、どうしても、頭の中から消すことができない。

 

「私、考えたら、先生のこと何も知らないのになあ。なんでこうなっちゃったんだろう」

「ありなんじゃない? それが、ひとめぼれってやつじゃん」

と、理沙は笑った。

【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第9話 「深紅の誘い」

総務部オフィス

その日の午後。

天野君に「先輩、お客様です」と言われ、総務の受付に行くと……

 

そこに、桐生先生が立っていた。

 

思考停止。

 

私はガチガチになって、桐生先生を見つめた。

 

「先月のあなたの健康診断の結果が届いていたので、持ってきましたよ」

と先生は微笑んで、私に封筒をさし出した。

「あの……私、どこか悪いところがあったんですか?」

「いいえ、特に気になるところはなかったようです。よかったですね」

と、先生は微笑み、

「時間があったら、また翼に会いに来て下さいね。じゃまた」

と言い、去っていった。

 

私はしばらくその場に立ちすくんでいた。

【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第9話 「深紅の誘い」

私のデスク

それからは、ニヤニヤが止まらなかった。

先生が、“私に会うために”わざわざ足を運んでくれた。

もう、それだけで、天にも昇る気持ちだった。

 

ふと前の方を見ると、天野君が手を止めて、私を見ていた。

「ん?」という表情をして見せると、彼は立ち上がり、私のデスクに近づいてきた。そして、

<今日もご飯いきませんか?>

と書いたメモを置いた。

 

この一か月、彼の歓迎会でみんな一緒に食事をした後も、彼は私を個人的にランチやディナーに誘ってくるので、私も応じ、何度か一緒にご飯を食べた。

 

今までの私だったら、こんなイケメン年下男子、格好の妄想ネタだったはずなのに、なんの感情もわかなかった。

ただ、彼が自分のことをいろいろと話すのを、黙って聞いて、笑っているぐらいだった。

 

「あ、今日は予定があるの。ごめんなさい」

と断った。

本当は予定なんてないけれど、今日は他の男と食事なんて無理。

桐生先生との思い出(て、とても大袈裟だけど)に浸っていたい。

 

「そうですか。一か月、いろいろ教えてくれた御礼にフレンチ予約したんです。ワインがすごくおいしいお店で……。ほら、セリカ先輩、ワイン好きだって言ってたから。予定終わってからでいいから、来てもらえないですか?」

私は首を横に振った。

「ごめん」

「俺、いちおう、待ってますから」

天野君は引きつったように笑って、店の名前と場所が書いた小さなパンフレットを机に置いた。

 

でも、私は行かなかった。

天野君はもしかしたら、私を好きなのかもしれないと思った。

だからこそ、やっぱりその気持ちには答えられない。

 

タイミング悪い。

 

もう少し前だったら、私はノリノリでワインをごちそうになり、ルンルンで彼との時間を楽しめただろう。

 

両想いだったら、幸せだったろうな。

 

桐生先生には片想い。

でも、仕方ない。

好きって気持ちはそんなものじゃないと、まるで中学生の女子みたいに、真っすぐに考えている。

オトナはいろいろあるけれど、それでも本当の「好き」は、他の人と過ごすことで忘れたりできるものじゃない。

 

私は翌日、桐生先生に会うために、臨時医務室に向かった。

【恋愛小説】私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~ 第9話 「深紅の誘い」

 

第1話から読みたい人は……
私のカレイドスコープ ~妄想社内恋愛のススメ?~
次回をお楽しみに!!

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