【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第1話

鳴海敦史(なるみあつし)は、ある雨の日、一人の女と出逢う。その美しさに目を奪われ、心揺さぶられる敦史。

だが数日後、その女が自分の直属の上司として赴任する青木聖良(せいら)であることを知る。

聖良から目が離せなくなり、心が傾いていく敦史だったが……。

第1話 女神降臨?(Atsushi-side)

プロローグ~雨の出逢い

激しい夕立にあい、雨宿りしていた。
去年つぶれた、小さな煙草屋の軒先。

そこに、背の高い女の人が駆け込んできて、
スッと俺の隣りに立った。

初めて見る顔。
切れ長の目が少し冷たい感じに見えるが、すごく美人だ。

それからしばらく、狭い軒下に二人で佇んでいた。
雨はなかなか止まなかった。

どれくらい経っただろう。

その人が少し足を動かした拍子に、足首のアンクレットが切れて、するりとサンダルの下に落ちた。
彼女はそれを一瞥(いちべつ)しただけで、拾おうとはしなかった。

そうして、俺をゆっくりと見て、

「罰かしらね。何も悪いことしてないのに」

と笑った。

その瞬間、俺は恋に落ちたんだと思う。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第1話

営業部オフィス

俺・鳴海敦史は、某電機メーカーに勤務する27歳。そこそこのレベルの私立大学を出て、第一営業部に入社した。

自分でも、明るくて社交的なタイプだと思うし、学生時代にサッカー部で培われた根性や集中力みたいなものもあると思う。

なのに、入社以来5年、営業成績はイマイチだった。

 

うちの営業部長がパワハラ・セクハラ全開のハゲおやじで、このハゲに何年も虐げられていたわけだが……ついに先月、飲み会の席で酔っ払って女性社員にしつこく「キスして~」とせがみ……地方に飛ばされた。

ざまあみろだ。

 

今日、その後任の部長が来るという。

 

ニューヨーク支社で、むこうの企業とでかい契約をいくつも取り付けたことがあるという、バリバリのトップセーラーだったらしい。

 

「名前『青木聖良』って言うんだな。これ、なんて読むんだろう? 『まさよし』とか?」

俺がそうつぶやくと、隣の席に座っている同僚の水口がクスッと笑った。

「水口、なんで笑うんだよ」

「いや……鳴海、まだ知らなかったんだな」

「え?」

「先週、新部長が挨拶に来た時、おまえ出張だったからなあ。まあいいや。いずれわかるよ」

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第1話

新しい上司は…

しばらくすると、日頃はめったに姿を現さない宮川専務が第一営業部のオフィスの扉を開け、入ってきた。

水口が、

「いよいよ来たみたいだな」

と、言った。

専務は、

「第一営業部の諸君、今日からここに配属される青木営業部長だ」

と皆に告げ、扉の外に向かって手招きした。

 

白いスーツに身を包んだその人が、オフィスに姿を現した。

 

「あ!」

俺は思わず、声を上げた。

 

髪の長い、美しい女性が佇んでいた。

 

「青木聖良(せいら)と申します。あらためまして、よろしくお願い致します。」

彼女はそう言って頭を下げ、専務に連れられてオフィスの一角にあるガラス張りの部長室に向かった。

 

そこからは、まさにスローモーション。

オフィスを静かに歩くその人に、一同、目が釘付けになった。

 

水口は、

「びっくりした? 『まさよし』じゃないよ、『せいら』だよ。女だったんだよ。しかも、超美人。ラッキーだよな」

と、俺に耳打ちした。

 

だが、水口のその言葉も、どこか遠いところで響くような感覚で聞いていた。

俺は自分だけがオフィスの皆とは別世界にいるみたいに立ち尽くし、ぼんやりと部長室のデスクに着く彼女を見つめていた。

 

その人は……

俺の新しい上司は……

 

あの雨宿りの時に出逢った人だった。

 

俺は、自分のデスクの引き出しを静かに開けた。

そこには、あの日彼女が残していった、ちぎれたアンクレットがあった。

 

 

やがて、宮本専務が、

「鳴海くん」

と、俺を呼んだ。

「は、はい」

「ちょっと、部長室に……」

と、手招きした。

 

緊張でガチガチに固まった体を引きずって、彼女と専務がいる部長室に入る。

すると、いつもは俺なんかには目もくれない専務が、ニコニコしながら、

「鳴海くん、今日から君が、青木部長の補佐として彼女についてくれ」

と、言った。

 

彼女は、

「鳴海くん、よろしくね」

と、微笑んだ。

 

俺は見逃さなかった。

その左手の薬指に、細いプラチナが光っているのを。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第1話

 

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シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~

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