【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第3話

雨の日の出逢いを心に秘め、上司と部下としての関係が始まった二人。

敦史にはセフレの春奈がいたが、彼は聖良と知り合って以来、春奈への関心を無くしていた。

一方の聖良は、社内でさっそく力を発揮し、輝きを増していた。

ある夜、バーで飲むことになった二人は……

第3話 2人の時間(Atsushi-side)

未読のLINE

出勤している途中、LINEの通知音が鳴った。

 

総務部の遠藤春奈からだった。

 

『おはよー 今日の夜、あいてる?』

『おはよう。まだわからないな』と打ち返す。

 

春奈は、いわば、セフレのような存在だった。

半年ほど前、会社の飲み会で酔った勢いでそういう関係になり、それ以来、たまにホテルに行く。

だけど、好きかと聞かれたらたぶん答えは「No」

この先、恋人とかそういう存在になる相手という感じはない。

「しばられるの嫌だし」という春奈の方にも、そういう気持ちはないみたいだ。

 

『久しぶりに会わない?』

 

という返事が表示されたが、俺はそれを未読スルーした。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第3話

活躍する彼女

青木部長の補佐について1週間が経った。

 

彼女は事前に聞かされていたとおり、とても頭が切れ、行動力もあった。たった数日で、営業部の空気を一変するような存在感を放っていた。

「成績がよかったのは、枕営業でもしたからじゃない?」

と陰口をたたく社員もいたが、そんな下世話な噂をひっくり返すような手腕を見せつけていた。

 

俺は、すぐそばでテキパキと指示を出したり、動き回ったりする彼女を見ながら、どこか複雑な心境だった。

 

雨の日のことは「記憶にない」と言ったけれど、絶対に嘘だ。あの時、一瞬だけ、その瞳の奥が揺れたように見えた。

 

でも、彼女が仕事に集中したいというのなら、俺はそれに応えるしかない。だから、こっちも何事もなかったように、彼女の部下として言われるままに動く。

 

「鳴海、今日の夜、あいてる?」

彼女にそう言われ、俺は即座に「はい」と返事をした。

「今夜、イズミ開発の泉社長と会食なの。報告によると、社長はかなりの女好きで有名なんだって。だから、ボディガードとしてついてきて」

と笑った。

 

俺よりも年上で、既婚で、営業部を引っ張る敏腕上司。

それでもときおり見せる笑顔は、子どものようにあどけなくて、ドキッとする。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第3話

こぼれおちる言葉

予想どおり、泉社長はなにかにつけて彼女にボディータッチをしたがるようなセクハラじじいだった。

大事な取引先だから怒らせないようにかわすのは大変だったが、俺が何度も助け舟を出して、窮地?を救った。会食後も「もう一軒」と粘るじじいを、タクシーに押し込むところまで頑張った。

 

じじいが去った後、

「部長、お疲れさまでした。御宅までお送りします」

と言うと、彼女から

「せっかくだから、どこかで少し飲まない? いい店があったら教えてほしいし」

と、意外な言葉が返ってきた。

 

俺は、時々足を運ぶカクテルバーに彼女を連れて行った。

 

「部長はお酒強いんですか?」

「そんなに強くはないけれど、飲むのは嫌いじゃないわね。君は強そうね」

「はい。酒そのものも飲むことも、嫌いじゃありません」

仕事中にはしないような会話をぽつぽつと交わす。

彼女のプライベートと言ってもいい時間を共有していることに、胸がわくわくした。

「部長は結婚してるんですよね?」

「うん。もう3年になるわね。子どもはいないわ」

彼女はグラスの氷をかきまぜながら、聞き返した。

「君は? 彼女いるんでしょう?」

「いいえ、いません」

この時初めて、春奈の朝のLINEを未読スルーしていたことを思い出した。

けれど、それはすぐに意識の下に沈んでいった。

「主人はとてもやさしい人だけど、なんだか……」

「はい?」

「なんだか、疲れちゃった。彼の奥さんでいることに……」

 

その横顔が、あの雨の日の彼女と重なった。

 

「部長、俺……あの日のアンクレット、持ってます」

 

そんな言葉が、思わず口を突いて出た。

 

彼女は俺を見ないまま、フッと笑って、

「捨てちゃっていいわよ。もういらない」

とつぶやいた。

 

一瞬、彼女を抱きしめたいような衝動にかられた。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第3話

 

第1話から読みたい人は……
シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~
次回をお楽しみに!!

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