【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第4話

ある日、営業部が契約不履行のピンチに追い込まれるような事件が起こる。

戸惑う聖良と、なんとか彼女を救おうとする敦史。

二人の心は急速に近づき……

第4話 濡れるくちづけ(Seira-side)

惹かれていく心

私は毎日、疲れ果てていた。

これまでの培ってきたノウハウを提供することで営業部の売り上げはアップし、上役たちの期待を裏切らずに済んでいた。

それでも、足を引っ張ろうとする勢力や、女だからと見下す人たちに対し、背中をみせるわけにはいかない……そんな緊張感が常に付きまとっていた。

 

そんな私を鳴海が支えてくれていた。

彼のポテンシャルの高さはあますことなく発揮され、すべてのサポートを完ぺきにこなしていた。

 

夜が更けて帰宅しても、亮介は私よりもさらに遅い時間にならないと戻らず、冷えたベッドに一人で横たわる日々が続いていた。

 

亮介には、私よりも大切なものがたくさんある。

彼が愛しているのは誰でもない、自分自身なのだ。

 

そんな亮介との生活が苦しくなっていることを、どうして鳴海にこぼしたりしたんだろう……私は、あの夜のことを後悔していた。

 

しかも、彼はあのアンクレットを拾い、ずっと持っていた。

それが何を意味するのか……

 

心が傾いていく感覚を、なすすべもなく受け止めていた。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第4話

追憶の雨

その日は朝から雨だった。

想いもよらなかった悪い知らせが、営業部にもたらされた。

 

部品を発注している下請け業者がなんの前触れもなく倒産してしまい、営業部が取り付けた来月納品予定の大口契約が履行できない……という危機が浮上したのである。

特殊な部品のため、すぐに代わりを用意できるものではなかった。

 

雨の中、私は鳴海と一緒に、下請け業者の工場に向かった。

 

けれども、工場はもぬけの殻。ほとんど夜逃げ状態だった。

「遅くても明日までに代わりの業者を手配しないと、来月の納品に間に合わない」

私がつぶやくと、鳴海は、

「水口たちが必死で探してますが、今のところまだ……」

「契約不履行の時、こちらが払う損害金は億単位よ」

私は傘を落とし、工場の前で膝を落として座り込んだ。

 

「いきなり、こんなことになるなんてね」

自虐的な笑いを浮かべて、鳴海を見上げた。

 

「これもまた、何かの罰?」

 

 鳴海は一瞬せつない表情を浮かべると、私の腕を持ち、引き起こした。

 そしていきなり、私をぐいっと引き寄せ、抱きしめた。

 

「必ず、俺がなんとかします」

 

力が抜けてだらんとしている私の耳元でそうつぶやき、少しずつ顔をずらした。

 

そうして……

私たちは吸い込まれるように唇を重ねた。

 

雨は激しさを増し、私たちを濡らし続けていた。

 

鳴海は、

「すみません。ずっと、好きでした」

とつぶやいた。そうして、

「俺が必ず、あなたを助けます」

と、くり返し言った。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第4話

逆転

帰りの車で、私たちはほとんど言葉を交わさなかった。

私は、窓の外を流れる景色を見つめ、鳴海はずっと通話やLINEでやりとりしていた。

仕事のことと鳴海のことが交錯して、私の胸の内はざわざわと熱くうごめいていた。

 

社にも戻ってからもしばらくは皆でバタバタと動き回ったが、事態は意外なところから収束に向かっていった。

 

総務部の遠藤という女子社員の実家が岐阜で部品工場を営んでおり、部品の設計図さえあれば不眠不休で数を整えられるかもしれない……とわかったのである。

 

以前から遠藤と交流のあった鳴海がそれを思い出し、彼女を通して交渉してくれたのである。

 

話がまとまると、第一営業部に歓声が上がり、鳴海や遠藤のお手柄を皆がたたえた。

 

私は鳴海に、「ありがとう。本当によくやってくれましたね」と言い、手を差し出した。

彼は嬉しそうに微笑み、強く握り返した。

 

けれど……

 

その様子を、冷めた視線で見つめる存在があることに、この時の私は全く気づいていなかった。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第4話

第1話から読みたい人は……
シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~
次回をお楽しみに!!

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