【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第6話

敦史に思いを寄せる春奈は、彼をホテルに誘い、結婚と言う言葉をちらつかせる。さらに、彼が聖良に惹かれていることに勘付き、「彼女は人妻だからあきらめた方がいい」とに詰め寄るのだが……。

 

声を聴きたい(Seira-side)

彼と彼女

下請け工場からオフィスに帰って、鳴海はピンチを乗り切るために必死で動いたし、私も何事もなかったように振舞った。

 

それが、最初に二人の出逢いをなかったことにした私の、それを受け止めた彼の、いつのまにかで出来上がっていた暗黙のルールだったから。

 

あの雨の中でのキスも、「好きでした」という言葉も、オフィスの喧騒に埋もれて、まるで夢の中の出来事のように薄れていった。

 

帰り際、ビルを出て駅に向かって歩いていると、通りの向こうで、鳴海と遠藤春奈が二人で一緒にタクシーに乗り込む姿を見た。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第6話

夫の秘密

深夜0時。

私はリビングの窓辺に座り、雨でキラキラ輝いて見える夜景を見ていた。

出張から戻った夫の亮介は「今日は疲れたから」と早めにベッドに入っていた。

 

亮介と結婚してから5年。

彼の裏切りを知ったのは、ニューヨーク支社にいる時だった。

 

私のアメリカ転勤に伴って、私たちは離れ離れになっていた。

 

慣れない地で実績を出そうと一生懸命になっていた私は、亮介の本心など知る由もなかった。

大変だったからこそ、彼を心の支えにし、早く業績を残して日本に凱旋したいという想いも強かったのに。

 

大きな契約を取り付け、厚い信頼を重ねるようになってから、私は長期休暇を許され、日本に一時帰国することになった。

亮介を驚かそうと一日早く帰国し、自宅に向かった。

 

そこで私は、亮介が私たちの寝室に女性を連れ込み、愛し合っている姿を目撃してしまったのである。

あとでわかったことだけれど、その女は、彼が学生時代からずっと繋がっている人で、彼は親しい友人に、

「心から愛しているのは彼女。聖良は、ビジュアルも社会的なスティタスも申し分のない女だから、妻として横に置いているだけ」

と本音をもらしていことも知った。

 

亮介は私が女との情事を見てしまったのを知らないまま、いつもと変わらない優しくて素敵な夫を演じ続けた。

私もまた、何も見なかったことにして、アメリカに戻り、仕事に没頭した。

 

「このまま一人でいたい。もう日本には帰りたくない」と思っていた矢先、本社第一営業部の部長の話が舞い込んだのである。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第6話

彼の声

窓を濡らす雨を見ながら、私はワインを飲んでいた。様々な思いが去来し、いたたまれなくなり、気づいたときには、鳴海の番号に電話をかけていた。

 

もし彼が出たら、どんな話をしていいかわからない。

でも、酔っていたから、雨が降っていたから……冷静ではなかったのだろう。

 

けれど、電話はつながらなかった。

もしかすると、まだ遠藤春奈と一緒にいるのかもしれない。

 

今夜はどうしても亮介と同じ部屋に寝たくなくて、私はリビングのソファに横たわった。

 

しばらくすると、電話が鳴った。

 

鳴海からだった。

ぎゅっと胸がしめつけられる感じがした。

 

「……もしもし」

「もしもし、部長、お電話とれずすみません。」

「いいえ、私の方こそ、遅い時間にごめんなさい」

「何かありましたか?」

 

私は言葉に詰まった。

ワインのせいか、頭が回らなくて、どう返していいかわからない。

まさか、「声が聞きたかった」なんて、私の方からは絶対に言ってはいけない気がした。

 

しばらくの沈黙の後、

「仕事のこと、もう一回お礼言いたくて。今日はちゃんと時間取らなかったから」

かろうじてそう言うと、彼は、

「わざわざありがとうございます」

と、つぶやいた。

 

彼はまだ、外にいる雰囲気だった。

 

「まだ帰ってないの? 雨、大丈夫?」

私がそう言うと、今度は彼が言葉につまったように黙った。

しばらくして、

「今日、雨の中で伝えた気持ちは本当です。今も、お電話いただいて嬉しかったです」

と、唐突に言った。

 

彼の声が、心に染み入るように響いていた。

いつもそばにいるから気づかなかったけれど、あらためて、彼の声が好きだと思った。

スマホを握りしめる私の頬に、涙が伝う。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第6話

第1話から読みたい人は……
シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~
次回をお楽しみに!!

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