【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第7話

雨の日に交わした口づけを胸に、互いのことが心から消せない敦史と聖良。想いが加速していく二人だったが……

消せない炎(Atsushi-side)

離れ離れに

深夜の電話。

彼女は、

「私も声が聴けてよかった。でもね……私は結婚しているし、君の上司だし、これ以上どうすることもできないわ」

と言った。

消えてしまいそうなはかない声だった。

翌日から、会社での俺たちは、いつもの上司と部下に戻った。

彼女の言うとおり、関係が進んだって、どうすることもできない。つらくなるだけだと思った。

 

彼女が赴任して一ヶ月が過ぎたある日、第一営業部に宮本専務がやってきた。

 

専務は部長の部屋に来て、彼女と俺に告げた。

「明日から、鳴海君には通常業務に戻ってもらう。青木部長には、別の人間を秘書としてつけるようにしたよ」

と言った。

「鳴海君は、先日の働きで上役たちの間でも評価が一気に高まった。これからは、第一線の営業マンとして本格的に力を発揮してほしい」

 

俺は、「ありがとうございます」と言ったが、少なからず動揺していた。

だが、彼女の方は表情を変えず、

「わかりました。では、鳴海君は今日いっぱいということですね」

「そうだね。鳴海君、ちょっと彼女と他にも打ち合わせしたことがあるから、席を外してくれないか?」

俺は「承知しました」と頭を下げて、その場を後にした。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第7話

最後の晩餐?

終業時刻が近づいていた。

それは、彼女と二人で過ごす時間も少なくなってきたということだ。

俺は少し離れたデスクで仕事をしている彼女に気づかれないよう、深いため息をついた。

 

すべて忘れて、もとのような俺に戻れと言うことなんだろうか。

前任のハゲ部長の下で、大した業績も残せず、沈んだ毎日を送っていた頃の俺に。

 

彼女は書類の確認に没頭していた。

その瞳も唇も、頬にかかる髪も、すべてが美しく……愛しいと思った。

 

すると突然、彼女が顔を上げた。目が合ってしまった。

「ねえ、今日、予定ある?」

「い…いいえ、特に何も」

「これまでのお礼に、何かごちそうしたいわ。どうかしら?」

「あ…はい、わかりました。ありがとうございます」

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第7話

密やかな空間で

俺たちは、隠れ家的な雰囲気で評判の店に行った。

掘りごたつ式の個室に通された。

白ワインで乾杯した。

 

仕事の話やオフィスの仲間のことなど当たり障りのない話をぽつぽつとしたが、やがて、会話が途切れる。

俺の口からついに、どうしても抑えきれない言葉がこぼれ落ちた。

 

「今日、部長のそばを離れることになって、あらためて気が付きました。どうにもならない関係だって、わかっています。でも、やっぱり俺、あなたへの想いを消すことができません」

 

彼女の表情が切なくゆがみ、それを見られたくないのか、彼女は口元に手を当てて顔を横にそらした。

 

「どうしても嫌と言うなら、俺の気持ちに答えてほしいとは言いません。せめて、これからも、あなたを見守り、思い続けることを許してください。あなたがつらい時は、俺に力にならせてください」

 

「今日…宮本専務に言われたの。あなたが部長付きを解かれるのは、確かに専務が言っていた理由が大きい。でも、それだけじゃない。あなたと私が『怪しい』『二人だけで仕事わせるべきじゃない』って、専務に進言した人がいるそうよ」

 

すぐに、春奈のことが浮かんだ。

 

「女で高い役職を持つということは、たくさんのリスクと背中合わせよ。妬まれることだってある。私は覚悟してる。でも、その上で私たちが上司と部下を越えた関係になるのは、あなたにとっても危険なことだわ。巻き込みたくないの」

 

俺はフッと笑って下を向いた。

すると、彼女は、バッグを持って立ち上がった。

「今日は、それを伝えたくて誘ったの。ごめんなさい」

と言った。

 

俺もすぐに立ち上がり、出口に進もうとする彼女を遮る。

そして、彼女の瞳を射るような、真剣なまなざしで言った。

「そんなこと、関係ありません。俺のことが嫌いですか?」

 

彼女は、

「嫌いなわけないわ。嫌いになれたら、こんなに悩んだりしない」

 

俺は彼女の肩を引き寄せ、激しくキスをした。

彼女も、それに応えるように身をゆだね、その手からバッグが滑り落ちた。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第7話

第1話から読みたい人は……
シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~
次回をお楽しみに!!

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