【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第10話

聖良と結ばれた亮介は、あいまいな関係を続けていた春奈に「もう会わない」と告げる。

しかし、春奈は「好きだから、離れたくない」と言い出し……

第10話 崩れていくバランス(Seira-side)

重なり合う魂

結婚するまでに、私は亮介以外の男性ともつきあったことがあり、当然、それぞれ体の関係にもなった。たくさん遊んだわけではなかったけれど、セックスの経験は人並みに重ねてきたと思う。

 

けれど、敦史との情事はそんなすべてを凌駕し、一生に一度と言っても良いほどの無上の悦びに包まれた時間だった。

肌と肌の境目がなくなるような体のフィット感も、つながった部分が溶け合うようにからみつく感触も、全身を貫くしびれるような恍惚も……すべてが初めてだった。

 

私たちはその後、週に一度、体を重ねるようになっていった。

肉体的なつながりだけでなく、魂そのものが一つになり、天に舞い上がるような感覚が強くなっていった。

 

「もっと早く出会えていたらよかったのに」

彼は私の薬指に触れながら、そうつぶやく。

 

「二人ともフリーなら、こんなふうに隠れて会ったりしなくてもいいのに」

「ごめんね。でも私は、こうしてあなたと出会えただけで十分幸せよ」

と、私は彼の手を握り返す。

 

結婚しているというのは、たった一枚の婚姻届によって決められるもの。

人に向かって堂々と宣言できるような関係ではないけれど、誰からも祝福される二人ではないけれど、身も心も一つになれるような存在とめぐり会えたことに、私は心から感謝していた。

 

そしてある時フッと、亮介も、昔からつきあっているあの女性に対して、こんな想いを抱いているのかもしれないと思うようになった。

どんなしがらみも制約も乗り越えて、一緒に生きていきたいと思える相手。

すると、長年、私の心を支配していた悲しみや恨みが、スッと消えていくような感覚になった。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第10話

忍び寄る変調

ある日の夕食の時、キッチンで支度をしているとリビングで読書をしていたはずの亮介が、こちらをじっと見ているのに気づいた。

「ん? どうかした?」

と尋ねると、亮介は真顔のまま、

「聖良、最近、感じが変わったね」

「どんなふうに?」

「明るくなった……って感じかな。いつも表情が穏やかだし、たまに鼻歌が出たりしてる。そんな君を見るの、久しぶりかもしれない」

ドキッとした。

敦史の顔がよぎる。

「仕事が落ち着いてきて、ストレスが減ったからかも」

と、平静を装って笑って見せると、亮介は「そうか」と言って、また手元の本に目を落とした。

 

確かに、営業部長としての仕事も安定していた。

第一営業部の成績は緩やかではあったけれど右肩上がりで、上層部は満足そうだった。敦史に代わってサポートをしてくれるようになった秘書の千葉さんも有能で、様々な場面で信頼できた。

 

何より、営業マンとしての敦史が、以前とは打って変わって契約をとれるようになり、常に成績は上位だった。

二人きりの時、敦史自身が、

「素晴らしい営業部長のおかげです」

とおどけてみせるので、私が、

「では鳴海君、素敵な部長に感謝の意を表しなさい」

と言うと、彼は私を抱きしめ、唇を重ねた。

「でもさ、急に活躍し出すと妬みをかっちゃうね。水口なんて、最近はろくに口もきいてくれないよ」

 

知らず知らずのうちに、二人の関係が他のことにも様々な影響を与えている気がした。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第10話

胸騒ぎの電話

部長室の電話が鳴った。千葉さんが

「部長、総務部の遠藤さんからです」

と言う。

「遠藤さん? ……ああ」

 

岐阜の実家が部品工場を営んでいて、営業部のピンチを救ってくれた彼女だった。

 私は電話に出て、その時の御礼をあらためて口にしたが、彼女は相槌もそこそこに、思いもよらなかった“本題”を告げた。

「個人的にお話ししたいことがあるのですが、今日の終業後にお時間いただけないでしょうか?」

「どういうお話でしょうか?」

「鳴海さんのことです」

 

私は絶句した。

【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第10話

第1話から読みたい人は……
シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~
次回をお楽しみに!!

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