【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第13話

春奈が自殺未遂を図ったことで敦史は追い詰められ、彼女の両親や会社から「春奈と結婚するか、それができないのであれば訴訟による慰謝料請求と左遷・解雇」の選択を突きつけられる。

いずれを選んでも聖良と引き裂かれることになってしまう敦史は苦悩する。

第13話 別れの予感(Seira-side)

罪と罰

噂や憶測を含め、様々な話が社内をかけめぐり、敦史は渦中の人となった。

私は宮本専務ら上層部に呼び出され、彼の直属の上司として事実を聞かされた。

 

彼からは、

「君を巻き込むわけにはいかないから、しばらく連絡を絶つね。ごめん」

と短いLINE(ライン)がきて、私は彼と直接話しをすることはできなくなった。

 

胸がざわめき、体が震えた。

 

遠藤春奈という一人の女性を、傷つけ、死のうというところまで追い詰めてしまったことへの罪の意識。それも、私を強くさいなんでいた。

私ですらそうなのだから、敦史はどれだけ動揺し、彼女を思い、後悔しているだろう。

 

夫がいる身でありながら、別の男性に惹かれてしまった私の罪。

そして、二人に下された罰。

やっぱり私たちは、愛し合うべきじゃない……そんな想いが、日に日に強くなっていった。【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第13話

営業部オフィスの反応

敦史の欠勤が続いていた。

当然、私たちは引き続き個人的なやりとりをすることを控え、音信不通のまま10日が過ぎ去った。

 

営業部では、快進撃を続けていた敦史が動けなくなったことから、他の営業マンたちがその穴埋めのため、成績を上げようと懸命になっていた。

敦史については様々な話が飛び交っていたが、好きな人をつなぎとめようとした遠藤春奈の行動を責める声も少なくなかった。

 

私はいつも話には加わらず、一人で部長室にいる時間が多かった。

 

ある日の午後、部長室を出たところで、敦史と仲が良かった水口君に呼び止められた。

 

「部長、ちょっとご相談したいことがあるのですが……」

どこか、思いつめたような顔つきだった。

 

そうして、オフィス内の会議室で話をすることになり、そこで私は思いもよらなかったことを聞かされ、さらに憂いを強くすることとなった。【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第13話

それぞれの思惑

水口君は、敦史と仲が良かったものの、いつも彼をライバル視していたという。

私が赴任した直後も、敦史が取り立てられ私の補佐役についたことが面白くなく……

 

「二人の仲が怪しいと密告したのは僕でした」

と、私をまっすぐに見つめて告白した。

「どうして?」

「鳴海に嫉妬したんです。僕、初めて見た時から、部長に憧れていましたから。二人を引き離したくて……」

 私は深いため息をついた。水口君は続けた。

「鳴海が、遠藤春奈と付き合っていたことも知っていました。だから、春奈にも“敦史と部長が急接近している”と吹き込みました。そのせいで、こんなことになったのではないかと、心苦しい想いでいっぱいです」

彼は深々と頭を下げた。

そうして、つぶやいた。

「僕は実際、お二人が想い合っていたんじゃないかって感じていました。それなら、今、部長もお苦しいんじゃないかと思って……責任を感じてしまって」

 

私はフッと微笑んで、首を横に振った。

 

その日の午後、鳴海敦史に対しバンコクへの転勤の辞令が下りると、宮本専務から報告があった。

 

敦史が遠くなっていく。

手のひらから光の粒が零れ落ちていき、なすすべもなくそれを見つめているだけ……そんな感覚だった。

溶け合うように一つになった彼が、この体から引き剥がされ、手の届かないところへ行ってしまう。【恋愛小説】シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~ 第13話第1話から読みたい人は……
シークレット・レイン~禁断の社内恋愛~
次回をお楽しみに!!

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