なぜ疲れが起きるの?
なぜ頑張り過ぎたりじっと動かないでいたりすると、疲れが起きてしまうのでしょうか? まずはなぜ疲れが起きるのか、そもそも疲れとはどんな状態を言うのかを解説していきます。
そもそも疲れとは?
そもそも疲れとは、体がどのような状態のことを言うのでしょうか? 日本疲労学会では疲労について、「過度の肉体的及び精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う体の活動能力が衰退している状態」と記しています。
簡単に言ってしまうと、心身共に大きな負荷がかかっていて「休みが欲しい」と体が訴えている状態です。心身共にストレスを感じてしまうと、それ以上負荷がかかると体に害が及ぶという危険信号を発します。
その結果、体がだるくなったり楽しいという感情がなくなって疲れたと感じるようになるのです。
疲れが発生するのはなぜ?
20年以上疲労を研究した大阪大学医学部助教授の倉恒教授は、疲れの原因とメカニズムが分かってきていると言います。疲れが発生するのは、ストレスによる免疫低下で免疫物質が活発化し、脳に悪影響が及ぶからです。
免疫機能が落ちてくると口唇ヘルペスなどのウイルスの再活性化が起き、免疫系はウイルスの増殖を抑えようとします。しかし免疫系が出す免疫物質はウイルスを抑制するのには有効ですが、脳に悪影響を与えてしまう場合があるのです。その結果疲労感が大きくなり、不安や抑うつなどをもたらして慢性疲労になっていきます。
また、セロトニンが不足していることも原因の一つです。通常免疫物質は末梢神経から分泌されますが、ストレスによって発生した免疫物質は脳内のグリア細胞から作られていることが分かりました。
この細胞で作られた免疫物質はセロトニンの輸送体に悪影響を及ぼして、セロトニンを減少させるのです。その結果、疲労感がより大きくなり慢性疲労を引き起こします。
やる気が出ない
こころがしんどくなってくると仕事や勉強、家事など、様々な行動に対するやる気が削がれてしまいます。特に好きな趣味に対してやる気が出ない時は要注意です。
好きなことや趣味に没頭する時間というのは、人によってストレス解消にもなる行動です。それなのにやる気が出ない、やったとしても楽しいと感じられない場合は「こころがしんどい」状態にあると言えます。
食事量やよく食べるものが変わった
精神的に安定している時期は食事も安定しやすいのですが、実はストレスがかかってこころがしんどいと感じるようになると、食生活に変化が見られるようになります。特に顕著なのが、食事量です。
人によって違いますが、食欲がなくなって食事量が減ったり、逆に食欲が増して食事量が多くなったりします。明らかに食事量が変化している場合、ストレスがかかっている可能性が高いので注意しましょう。
また、食事量は変わっていなくても食べるものが変わった時はサインになっている可能性があります。
例えばこれまで夕飯後は何も食べなくても満足できていたのに、最近はデザートを食べるようになった、お酒を飲む量が増えた、コーヒーをよく飲むようになったなどの傾向が現れたらこころがしんどくなっているかもしれません。
無意識のうちに甘いものやアルコール、カフェインを好んで摂取するようになったら気を付けましょう。
寝坊が多くなった
こころがしんどい状態になると、寝坊が多くなってしまいます。
これは、不眠症を併発もしくは不眠症に近い状態になってしまい、朝起きられなくなってしまうためです。
たまに寝坊してしまうのは仕方のないことですが、もしも毎週のように寝坊するようになったり、無意識に就寝時間が遅くなっていたりする人はこころがしんどくなっている可能性が高いです。
感情のコントロールができなくなる
人間には様々な感情がありますが、そんな感情のコントロールが自制できなくなった時、こころがしんどい時のサインとして現れているかもしれませんよ。
最近細かいことにもイライラしてしまう、他人にきつく当たるようになった、ちょっとした出来事にも落ち込んでしまうという人は特に注意が必要です。
また、さっきは楽しかったのに一気に落ち込んでしまうなど、感情の起伏が激しい人もコントロールができていません。
こころがしんどい時に現れるサイン
様々なストレスを受け、疲れが表面的なものだけでなく、こころにまで現れ始めると精神・肉体的にあらゆるサインが出始めます。どのようなサインが出てくると、「こころがしんどい」状態だと言えるのでしょうか?
「5つのストレス」が疲労の原因!?
疲れはストレスが引き金となって発生することが分かりましたが、実はそのストレスを5つに分類することができます。
・人間関係や仕事などにおける精神的ストレス
・激しい運動や過重労働で引き起こる肉体的ストレス
・紫外線や騒音など、生活する上で起こる物理的ストレス
・体内に入り込む化学物質や残留農薬による化学的ストレス
・ウイルスや細菌に感染して起きる生物学的ストレス
特に、人間関係や仕事などにおける精神的ストレスは、生活する中で必ずと言っていいほど生じてしまうものなので、疲労の原因となりやすい傾向にあります。
また、紫外線や騒音などの物理的ストレスというのは、例えば強い紫外線を浴びると細胞を構成するタンパク質だけでなく、遺伝子まで傷付けられてしまうことから体にとって大きな負荷がかかっている状態とも言えます。
いくら精神・肉体的なストレスがかかっていなくても、こうした物理的ストレスで慢性疲労に陥ってしまう場合もあるのです。これら5つのストレスは、神経や免疫系、ホルモンを分泌する器官にも影響を及ぼすとされています。
免疫が低下すれば、ウイルスや細菌に感染するリスクも高まり、生物学的ストレスを受けることになります。こうして、ストレスの悪循環ができてしまい、慢性疲労に繋がっていくと考えられるでしょう。
こころがしんどい状態を放置していると危険!
疲れによってこころがしんどいと感じてしまうことは、現代人にとって少なくありません。しかしその状態を放置していると、様々な危険が及びます。ここでは、どんな危険が及ぶのかを見ていきましょう。
体調を崩す可能性がある
こころがしんどいと感じている時は、体や精神的に大きな負荷がかかっています。放置したままでいると、頭痛が起きたり食欲がなくなったりなど体調を崩す可能性があるので注意しましょう。
もし体調を崩してしまった場合は、無理をせずに休暇を取って休むようにしてください。また、休暇を取っている時は体を横にしておくだけでなく、適度に動かすようにしましょう。
人間関係を壊す可能性がある
こころがしんどい状態の時は、心に余裕が生まれずに表情が暗くなってしまったりネガティブな発言が多くなったりします。周りが近寄りがたい状態を作ったまま放置しておくと、構築した人間関係が崩れてしまう可能性があります。
寄り添ってくれた人には感謝の気持ちを伝えて、今できることやできないことをきちんと伝えましょう。しかし中には寄り添わずにそのまま離れていく人もいますが、その時はその程度の関係だったときっぱり思うようにしてください。
何をしても楽しくなくなる
こころがしんどい状態が続いてしまうと、何をしても楽しくなくなってしまう無感情の状態を引き起こします。趣味や自分の好きなことをしていても楽しくなく無感情になってしまうのです。
無感情の状態が続いてしまうと、人生をつまらないと感じてしまうため早めに対処しましょう。
こころが疲れている場合はどうすればいいの?
こころがしんどいと感じている場合は、どうすれば解消できるのでしょうか?解消する前に、自分の心がどのくらい疲れているのかチェックしてみてから対処法を知ると良いですよ。
ここでは心の疲れ度チェックと、疲れた心の対処方法をご紹介します。
【心の疲れ度チェックをしよう】
まずは心の疲れ度をチェックしてみましょう。
①気分が沈みがちで憂鬱になることが多い
②上手くいかないことがあるとついイライラしてしまう
③朝早くに目が覚めてしまう、もしくは夜を不安に感じてしまって寝付けない
④食欲が湧かない、もしくは食欲が多くなる
⑤不安な気持ちをずっと抱えている
⑥じっとしていられない、もしくは動きたくない
⑦いつもよりも小さなミスをたくさんしてしまう
⑧人に言われたことが心に響かない
⑨通常の時と比べて体調が少し悪い
⑩趣味や好きなことをしても心が動かされない
上記の10個のチェック項目のうち、3つでも当てはまればあなたのこころは疲れています。
【疲れた時の対処法】
心身共に疲れた時や、上記でご紹介したこころがしんどい時のサインが現れてしまう前に、疲れを取るための対処法を実践してみましょう。
長時間同じ姿勢にならないようにする
まずは簡単なことから始めてみましょう。簡単に疲れを取る方法としておすすめなのが、長時間同じ姿勢にならないようにすることです。
例えば、デスクワークだと1日中椅子に座って同じ姿勢のままでいると筋肉が緊張状態になり、血行が悪くなって疲れが溜まっても排出しにくくなってしまいます。
もしもデスクワークで同じ姿勢になることが多いという人は、少し姿勢を変えてみたり、体を伸ばして筋肉の緊張をほぐすようにしましょう。
お風呂に入る
仕事が忙しいとついシャワーだけで済ませてしまう方もいらっしゃるかと思います。しかし、お風呂はストレスを解消し疲れを取るのにおすすめの方法です。水の中は浮力や水圧があって筋肉を弛緩させます。
また、温かいお湯が血液の巡りを良くして疲れを取り除きやすくしてくれるのです。ただし、熱すぎるお湯に入るとかえって体に大きな負荷がかかってしまい、ストレスに繋がります。
お風呂に入る時は少しぬるめに設定し、ゆっくりと浸かってリラックスしましょう。
睡眠の質を高める
睡眠は次の日に動くためのエネルギーを作る大切な時間です。
睡眠時間が少ないと活力も低下してしまい、より疲れやすくなってしまうでしょう。
睡眠時間がどうしても取れないという人は、睡眠の質を高めることに注力してみてください。例えば寝る1時間前からテレビやスマホを見ないようにすると、ブルーライトの影響を受けなくなるので睡眠の質が上がると言われています。
また、寝室の照明を寝やすいものに変えてみたり、枕の高さや柔らかさを調整したりすることも、睡眠の質を高くする方法の一つです。
適度に運動する
運動は体を疲れさせてしまうのでは? と思われてしまうかもしれませんが、実はストレスを解消させ血行促進による体に溜まった老廃物を排出させやすくすることから、適度な運動は効果的だと言われています。
激しい運動は負担となってしまいますが、自分がリフレッシュできる程度に運動をするようにしましょう。なかなか運動する時間が取れない人は、ストレッチから始めてみるのもおすすめです。
アルコールやたばこを控える
アルコールは少量であれば血行促進につながるのですが、大量に摂取してしまうと肝臓の働きが活発になり、疲れやすくなってしまいます。
また、たばこを吸うと体内のビタミンやミネラルが壊されてしまい、よりたくさんのビタミン・ミネラルを摂取しなくてはいけなくなります。
アルコールやたばこをストレス解消のために利用されている人もいますが、精神的に落ち着けても肉体的な負担・ストレスはかえって悪化しているので、控えた方が良いでしょう。
おわりに
疲れを感じる原因とこころがしんどいと感じた時に使える対処法などをご紹介してきました。
自分で自覚できる範囲で疲れを感じているならまだ良いのですが、中には心身共に疲れているにも関わらず、気付けないで頑張ってしまう人も多いです。
少しでも「疲れた」「こころがしんどい」と感じたら、早めに対処しておくことが重要となります。今回ご紹介したチェック項目や対処法などを参考に、いつの間にか溜まっていた疲れ・ストレスを解消していきましょう。
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