「愛」を忘れることは出来るのか?スピルバーグも涙した映画『妻への家路』3月6日公開

恋愛に関する例えで、「女性は、過去の恋愛を“上書き保存”し、男性は“名前をつけて保存”する」というものがあります。これは、男性が新しい恋愛をしても過去の女性との思い出を大事にするのに対して、女性は一度好きになった男性をすぐに忘れてしまえるということの例えですが、この言葉が表す様に、女性は愛した人のことを本当にそんな簡単に忘れてしまえるものなのでしょうか?…そんな議論が今にも始まってしまいそうですが、この愛にまつわる「記憶」というテーマは、この映画では少し様相が違うようです。

中国の巨匠チャン・イーモウが監督をつとめる映画『妻への家路』は、「文化大革命」前後の激動の中国が舞台。革命が終結し、20年ぶりに囚われの身から解放されたチェン・ダオミン演じる陸焉識(ルー・イエンシー)は、コン・リー演じる妻の馮婉玉(フォン・ワンイー)と再会の再会を心待ちにしながら故郷へと帰還します。

しかし、20年越しの感動の再会となるはずの妻は、どこか様子がおかしい。夫の帰りを待ち続けた心労のあまり記憶障害に陥って目の前の人物を誰だか忘れ、どうやら焉識を「方さん」なる人物と勘違いしている様なのです。他人として向かいの家に住み、収容所で書き溜めた妻への手紙を来る日も彼女に読み聞かせたり、帰らぬ夫を駅に迎えにいく彼女に寄りそったり……娘の丹丹(タンタン)の助けを借りつつ、忘れられてもなお妻に思い出してもらおうと様々な努力を重ねる焉識。そんな夫の隣で、婉玉は相変わらず夫の帰りを待ち続け……。

辛い恋が終わったときに、その思い出をすぐにでも忘れたいと願う女性の声をよく耳にします。そんな彼女たちと同じ様に、この映画での「忘れる」という行為は、悲しみを和らげるための婉玉の自衛行為であるように思えました。夫が戻ってくることを切望し続けながらも、20年という月日のどこかで本当に再会出来るという望みを諦めてしまっていたのではないでしょうか? 目の前に、長年会いたいと願い続けた夫がいるにも関わらず、その事が分からない妻と、自分のことを忘れてしまった妻に、他人のふりをしてまで寄り添い続ける夫。どこか暖かくももの悲しいすれ違いが、物語のなかで描かれて行きます。

果たして、彼女の記憶が戻る日は? そして、一向に記憶の戻らない妻に対し、焉識が下した決断とは? カンヌ国際映画祭、トロント国際映画祭をはじめとする13もの映画祭で喝采の拍手を巻き起こし、スティーヴン・スピルバーグに「1時間、涙が止まらなかった」と言わしめた感動作が、いよいよ日本でも3月6日(金)からTOHOシネマズ シャンテほかにて公開。歴史によって狂わされた“愛したことの記憶”に、思いを馳せてみては如何でしょうか?

【映画情報】
『妻への家路』
公開日:2015年3月6日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
出演:チェン・ダオミン、コン・リー、チャン・ホエウェン
原題:『歸来』(英題Coming Home)
監督:チャン・イーモウ
脚本:ヅォウ・ジンジー
配給:ギャガ
上映時間:1時間50分
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