【連載】ずっと独身でいるつもり? 第61回 結婚したい? したくない?

結婚をしたいと本腰を入れて思い始めて、そろそろ二年が経過しようとしています。前回、「したいと言い続けているのにできていないのは、もしかして心のどこかで結婚したくないという気持ちがあるのでは?」と考えて、結婚をためらう理由がそれなりにあると気がつきました。

三十代後半以上だとよくあると思うのですが、大きな理由のひとつに「生活ががらりと変わってしまうのが怖い、面倒くさい」というのがあります。

大学入学と同時に一人暮らしを始め、自炊もお金の管理もおぼつかず、水回りの掃除のテクニックも知らなかった頃ならまだしも、もう今は自分の生活のクセも理解しているし、そのクセとつきあいながらどう快適に暮らしていくか、というコツも掴みかけています。自分ひとりの生活ですら、それなりに快適にするには時間も手間もかかるのに、「やっとここまで来たのに、今度はこれを他人とすり合わせるのか」と考えると、軽く気が遠くなってくるのです。

○それでも結婚という可能性を捨てたくない理由

三十歳を過ぎて、長く続いている安定した関係の恋人同士が、このままでも問題ないのに結婚を選ぶとき、その背景にあるのは「子供を持ちたい」とか、「身内が亡くなった」など、先行きについて深く考えざるを得ない事情がきっかけになっていることが多い印象があります。生活スタイルを変えるというのは、人によっては簡単にヒョイっと乗り越えられる壁ですが、それぐらいの重みのある事情がなければ、なかなか乗り越えられない壁でもあるのでしょう。

こんなことを考えていると、「生活を変える覚悟もないのに、『結婚したい』ってどういうことなんだ。ただなんとなく言ってるだけで、本当は結婚したくないんじゃないのか」というツッコミが、自分に対し容赦なく入ります。この前は自分でなく、人から「何もかも捨てて結婚する気があるなら、できるはず」というツッコミも受けました。

「一人の快適な生活」というのは、私にとっては「捨ててもいい」ことに入ります。めんどくさいのは事実ですが、したくないとは思いません。「結婚するために捨ててもいいこと」を考えると、ほとんどのことは捨ててもいいことに入ります。 じゃあ、私は何を捨てられないのでしょう。ここまで考えたとき『セックス・アンド・ザ・シティ』の映画(一作目)のあるシーンが頭に浮かびました。

それは、サマンサという女性が、同居してほぼ事実婚状態にある恋人に向かって、別れを告げるシーンです。

「あなたを愛しているけど、それ以上に自分を愛しているの」

サマンサはそう言い、彼のもとを去るのです。最初に観たときは、この別れにあまり納得がいかなかったのですが、今ならわかります。「愛情のために行動を制約されるのが、サマンサにとっては『自分らしく生きていない』と感じられることだったのだ」と。あのとき別れを選んだサマンサの気持ちの重さが、今さら身にしみて感じられました。

捨てられないのは自己愛だとすれば、もう結婚を追い求めること自体、間違いなのではと思えてきます。結婚を諦めるのは、私にとっては簡単なことです。年齢的にも「結婚できる」と楽観的に考えられる要素のほうが少ないし、自分のややこしい性格を考えると、今後、深い恋愛をする機会がそれほど頻繁に訪れるとも思えません。正直、諦めたほうが気楽です。

でも、したこともないのに、結婚を「する」とか「しない」とか決めてしまうのは、おかしいことだと思うのです。はたから見たら、こんな私の姿は「いつか王子様が」と待っているだけでなにひとつ諦められないバカな女に見えることでしょう。出会う努力は今もしているし、実際に結婚に向いているであろう人に出会ったこともあります。でも、好きという気持ちになれなければ、どうにもなりませんでした。

「このチャンスを逃せば、もう次はない」という気持ちと、「好きだとは思えない人のために、いろんなものを捨てて一緒になれるのか」という問いの間で、悩みに悩んだ約二年です。こんなことで悩むくらいなら、諦めたほうがましだと何度も思いましたし、今もディープにこの問題について考えていると吐きそうです……。

それでも、ひとすじの希望や、「結婚って良さそうだな」と思う気持ちは、持っていたいのです。経験したことのないことへの尊敬の気持ちとともに。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩

(雨宮まみ)

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