【連載】ずっと独身でいるつもり? 第64回 独身の「理由」

変なことを言いますが、私は最近、自分の意識が独身男性化しているのを感じることがあります。

「こんな結婚生活がいいな~」とぼんやり想像するのは、手料理や楽しい会話、夜の営み。そして仕事が忙しいときは家のことなどそっちのけで没頭していたい……。まるで昭和の男のような結婚観が自分の中から出てくるのです。

昭和の男のような、と言っても、今の男性の結婚観も、変わってきたとはいえこれに近いものがあるのではないでしょうか。仕事を積極的に優先させたいわけではなくても、正直今の日本の会社に勤めていたら、仕事を優先させない人間はできない人間扱いされることが多いです。優先させざるを得ない。せめて家では安らげる時間が欲しい……。自分もそう考えているわけですから、そう思う男性の気持ちはよくわかります。けれど、自分がその「安らげる時間」を求められる側になると、「えっ、無理です。私も働いてるし」となってしまうのです。

未婚率の増加の原因については、さまざまなものが挙げられていますが、個人的な実感としては、とにかく時間的・金銭的に「余裕がない」ことがあると思います。結婚生活に至る前に、貴重な週末を割いてデートし、仕事の合間を縫って連絡を取り合い、恋愛して信頼関係を作っていく時間すら取れないという人もいます。

私自身、ある恋愛がだめになったとき、ものすごく落ち込み、毎日泣いている一方で、「ああ、しんどいけどもうジェットコースターみたいな気持ちのアップダウンもなければ、デート前に仕事が終わらなくて謝罪を繰り返すこともなくなるんだなぁ」と少しホッとする気持ちがあったくらいです。

結婚指輪? 結婚式? 新居への引っ越し? そんなことできるお金はいつになったら貯まるんだ? という状態の人もけっこういるでしょう。「今がいっぱいいっぱいなのに、これ以上何かに労力を割けない」。そう思っている未婚者も、たくさんいるのではないでしょうか。

○できないことを諦める

最近、十歳年下の女性と話す機会がありました。彼女は今、交際している男性はいないものの、基本的に「結婚はしたい」と考えており、これまで交際してきた男性とも必ず結婚話が出ていたそうです。

「今の職場は楽しいし、自分に合っていると思う。尊敬できる先輩もたくさんいる。けど、一生続けるかっていうと……」そう口ごもる彼女に、「好きな仕事だけど、もっとほかにしたい仕事があるの?」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。「いや、今の仕事は天職と言ってもいいくらいだと思う。けど、仕事と家事を両立するのは私には無理だから、結婚したら辞めたい」

結婚したら仕事を辞めたい、という女性が少なくない数でいることは、私も知っていました。しかし、私はそれを「専業主婦への憧れが強いんだなぁ」と解釈していました。仕事が嫌なのかもなぁとか、家事や育児を丁寧にしたいんだろうなぁとか、そういうふうに思っていたのです。

けれど、彼女の言葉から伝わってくるものは、そういうこととは全然違っていました。現実的に、家事と仕事を両立するのは無理。家事をきっちり分担にして続けるというのも、二人ともフルタイムではどちらもつらい、という「当たり前の現実」に即して考えた結果の、前向きで建設的な考えに思えました。自分のしたいことだけを考えて出した答えではなく、結婚する相手のことを考えた上での答えなのだな、とも感じました。

私は、家事や育児は女の仕事、という風潮には賛同できません。けれど、それは誰かがやらなければいけないし、当然のように自分の仕事としてやる男性はまだまだ少ないです。家事が好きな男性でも、今現在やる時間が取れない人もいる。私も、在宅勤務が可能なのに、それでもできていないこともあります。そんな状態で「幸せな結婚生活」をどのように実現するかを考えたときに、「あ、じゃあ私が家事やります。ただ、仕事との両立は無理なので仕事は辞めます」と、スッと手を挙げるのは、現実的な選択だなと思えました。

それと同時に、何もかも諦められない自分自身が、ひどくわがままで、自分のことしか考えていない人間のように思え、落ち込みました。「わがままに、自分のことしか考えずに生きたいのなら、ひとりで生きればいい」。そんな声がここしばらく、ことあるごとに自分の中から聞こえてきます。それは違う、と否定したいのですが、言い負かすことができないまま、モヤモヤしたものを抱え込んでいます。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩

(雨宮まみ)

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