男はなぜ、妻以外の女性に弱みを見せるのか

■妻には弱みを見せない、男の心理
男は妻には、なかなか自分の心の内を見せられない。一方で、妻以外の女性には心の底までさらけ出してしまうことがある。

ただ相手を口説きたいがために、意図的に(あるいは、本人としては無意識に)弱みを見せて気をひこうとするケースもあるが、ここでは、実際に妻以外の女性とつきあっていくうちに、どんどん男性が素直になっていくケースを見てみたい。

■妻とは、「利害関係」が一致する同志
まず、男性たちは妻に対してどう感じているのだろうか。

「うちは共働きでふたりの子を育ててきたから、完全に対等な関係。同志といってもいいかもしれません。だから愚痴は言えないですね。ちょっと何か言うと、『私だって大変なのよ』『あんただけがつらいわけじゃないからね』って怒られちゃう」(46歳・既婚男性)

「妻からの要求がきついんですよね。彼女がパートに出るようになったのは、僕の給料が減ったから。『本当は専業主婦でいたかったのに』と言われると、肩身が狭くて……。妻の両親が近くに住んでいるのですが、『あの子は体が丈夫じゃないんだから、無理させないでくださいよ』と皮肉交じりに言われる。つらいです」(37歳・既婚男性)

男たちが置かれた環境は、経済的にも精神的にもあまりいいとは言えない。実質的に収入は減るばかり。一方で、育児をしない夫は夫にあらず、家事もやらない、と妻からはバッシングの嵐。

女性は友だち同士で「女子会」と称して集まって愚痴ることもできるが、男にはそうした習慣がない。男同士は一緒に飲んで愚痴り合っているように見えながら、実はなかなか本音を言い合えないものなのだ。

■恋愛関係にある女性になら本音を出せる
そんな男たちが、ふとした拍子に恋に落ちることがある。

相手は独身の場合もあれば、既婚のこともある。お互いに、心寄せ合える関係だと認識すると、男は徐々に心の内を見せるようになっていくようだ。

「同窓会で再会した、かつて同級生だった男性とつきあって1年半になります。最初は懐かしくて一緒に食事をして、いろいろなことを話しましたよ。夫婦関係についても、子どもたちのことも。そうしているうちにお互いにかけがえのない存在になってしまった。彼は、家にも会社にも居場所がないということをよく言いますね。いつも『大丈夫、あなたならがんばれる』と励ましています」

44歳の既婚女性、ヨシエさんはそう言う。お互い、配偶者には話せないことも打ち明けられる存在になった。そんな彼と話しているうちに、もしかしたら夫も、こんなふうに愚痴を言ったり弱みを見せたりしたいのではないか、と思い当たった。

「だから、夫にも優しくするようになりました。それでも夫は、なかなか弱さをさらけ出そうとはしない。夫は夫なりにそうやってがんばることで、妻より優位に立ちたいという気持ちがあるのかもしれませんね。それならそれで見守っていけばいい。今はそんなふうに思っています」

男は妻からの労りにも素直に応えようとしないものなのだろうか。

■男を縛っている「男らしさ」
もし、男たちが妻に向かって、本気で弱さをさらけ出したら、妻たちは受け止めるはずだ。女性にはそのくらいの器量はある。ただ、男たちはぎりぎりになるまで、弱さを見せようとしない。

以前、リストラされた夫とその妻にインタビューをしたことがあるが、リストラされたことさえ妻には言えなかったという夫たちが多いことに驚かされた。39歳の既婚男性、カズオさんも似たケースかもしれない。

「中小企業に勤めていますが、会社はかなり厳しい状況です。でも、そのことは妻には言っていません。心配させたくないのと同時に、そんな経営不振の会社にいることにどこか引け目があるのかもしれない、男として。僕自身は今の会社も仕事も好きだけど、誰もが知っている会社に勤めていないことが、負い目としてあるのかもしれませんね」

名前の知られた大学出身、有名な会社に在籍、明らかな高収入、あるいは規模は小さくとも経営者であることなど、「男社会にある優劣」が男たちの心をある意味でむしばんでいるのかもしれない。自分の存在価値を決定づけるのがこうした基準である以上、男たちの心は常に傷だらけといってもいい。

自分とは何者か――を考えるとき、有名無名や数字で換算されるものが基準となると、人間は楽しく生きていくことがむずかしい。男たちはそうした呪縛から抜け出せずにいるのだ。

だからこそ、そんな基準を無視し、「ひとりの人間」「ひとりの男」として見てくれる、いわば利害関係のない女性にだけ、ひっそり心の内を見せることができるのだろう。

夫婦は、「夫」と「妻」というそれぞれの役割を、それぞれの仮面をつけて担っている側面があるのではないか。妻に弱みを見せたとたん、その役割や関係性が壊れ、夫婦関係が瓦解する危険性があると、夫たちは感じているのかもしれない。

「叱咤されたり、邪険に扱われるのが夫婦関係のよさかもしれないと最近、思いますね。だからこっちも奮起できる。それでもときどき、ふっと誰かに本音を話したくなる。でも、それは妻じゃない。これが男としての僕の本音です」

彼は、苦笑いしながらそう言った。この言葉を、女たちはどうとらえたらいいのだろうか。

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